ウォーターワールド

1995/09/27 日本劇場
ケヴィン・コスナーがかっこいい半魚人を演じる海洋SFアクション。
お金はかかってそうだけど物語が大味。by K. Hattori



 ユニバーサル映画が社運を賭けた超大作。壮大なセットを使った海上での大ロケーションを敢行し、出演する俳優も今が旬の人ばかり。ヒーローにケヴィン・コスナー、敵役にデニス・ホッパー、ヒロインにジーナ・トリプルホーン、謎の少女にティナ・マジョリーノ。それぞれひとりでも、十分に客を取れる俳優ばかりではないか。物語は全編息つく間もない活劇の連続。特撮も巧妙だが、大がかりなセットを惜しげもなくぶっ壊す思い切りの良さも、大作にふさわしい太っ腹ぶり。

 しかし、これだけの大風呂敷を広げておいて、この物足りなさは何だろう。血沸き肉躍る冒険活劇映画のはずなのに、観ているこちらには、熱さがちっとも伝わってこない。かえって白々しく、うそ寒い印象だけが残ってしまう。

 物語展開の先が読めてしまうのだが、これ自体は活劇映画として別に悪いことではない。活劇映画の魅力は、まさに活劇にわるわけだから、お話なんて付け足しなのだ。だから、良くできた活劇は何度見ても面白い。同じように血沸き肉躍る。ただ、この映画の地図を巡るエピソードにはミステリーの要素が多少あり、このあたりはもっとじっくりと語るべき部分だっただろう。このエピソードは、展開が性急すぎる。種明かしに何の工夫もない。もっと仕掛けが必要なんだよなぁ。あれだけもったいぶって、最初から最後まで物語を引っ張ったあげく、最後はやけにあっけなく目的地が見つかってしまうのにはガッカリだ。もう一波乱あってもいいだろうに……。

 主人公側とスモーカー側とで地図の取りっこをする部分が、この物語の8割を占めているのだが、そもそも地図が本物か否かが定かでないまま物語が進んでしまうため、双方の争いがいささかバカバカしく感じられる。主人公が地図を本物だと悟る場面は、映画の最初の方に入れなきゃね。スモーカーの側がそうした主人公側の気配を察して、その上で地図を狙って来るのでなければ、この物語はウソになる。

 それより何より、活劇場面の元気のなさこそが、この映画の致命的な欠陥なのだ。古典的な活劇映画の名場面を引用しているであろう、大がかりなスタントシーンの数々。この映画には、船を使ったありとあらゆるアクション場面が登場する。俳優も(スタントマンかもしれないけど)がんばっている。でも、つまらないのはナゼだろうか。カメラアングルや編集の問題かもしれないが、僕には技術的なことが良くわからない。ただ、どの場面も迫力不足であることは確かだ。思わず観客を画面に引き込んで行くような、心地よいテンポがない。次々興奮がエスカレートして行く、活劇映画の醍醐味がない。シーンとシーン、ショットとショットが途切れていて、少しずつはぐらかされる感じが残念だった。


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