帝都物語外伝

1995/07/29 テアトル新宿
『帝都物語』『帝都大戦』の人気にあやかって作られたいい加減な映画。
脚本の底が途中で割れて、あとは目も当てられない。by K. Hattori



 映画『帝都物語』は観ていないんだけど、続編の『帝都大戦』は劇場で観ている。それが結構面白かったので、今回の『帝都物語外伝』もある程度安心して観に行った。ヒロインの鈴木砂羽は『愛の新世界』で注目していた女優なので、その後の彼女に会いたかったということもある。

 ところが、この映画はダメですね。脚本がダメなのか演出がダメなのか定かでないが、登場人物が全員気狂いにしか見えないのです。舞台が精神病院だと言うことが、その印象に拍車をかける。結局この映画って、登場人物が全員精神的に病んでいるという目で見ると、超常現象や何かの説明を借りなくても、ひとつの閉じた世界の物語として全部それなりに納得できてしまうんだよね。語られているコトの大きさに比べると、映画で描かれている事件があまりにも小さすぎるんだよな。これではほとんど『エコエコアザラク』と変わらない。むしろ、学校という限定された場所と低予算を逆手に取った『エコエコアザラク』の方が、純然たるエンタテイメントとしては見応えがあった。

 若い男と女が主人公と言えば主人公なのでしょう。でも、そのどちらにも僕は感情移入できないね。何しろ、双方が共に病んでいるから。男は盛り場で若い女を次々ナンパしてはホテルに連れ込むが、いざとなるとインポになって正常なセックスが出来ない。濃厚な愛撫から爆発的な暴力に移行すると、そのまま女を殺してしまう。そのあげく、殺した女の死体を犯すんだよ、この男。インポで屍姦趣味のこの男に対し、どこに感情移入しろって言うのかね。この男が街で拾った女のひとりが鈴木砂羽。彼は彼女も殺そうとするが、結局殺せないままズルズルと同棲生活に入ってしまう。このあたりの説明も不十分で、よくわからないところなんだよなぁ。互いに特別な存在であることをこの瞬間に悟ったんだろうけど、映画を観ている観客に、それが一瞬にしてわからなければ白けてしまうんだよなぁ。

 この変態郎が勤めているのが、都内某所にある精神病院。ここが場所柄か気狂いの巣窟なんだよね。イヤナニ、患者のことを言っているわけじゃないんですよ。主人公の男は殺した女の死体を病院地下のプールに隠しているし、病院の院長は動けない患者に虫ピンを刺すようなサディストだし、看護婦は院長とできている。若い男は人形劇の最中に加藤の亡霊にとりつかれ、患者たちを次々と斬殺する。その様子をテレビモニターでながめながら、病院長は看護婦にフェラチオさせているんだからイヤンなっちゃうよね。

 全ての原因は主人公の男がインポだったことで、最後の最後に男のインポが治って良かったねという映画です。下らない映画を観てしまった。


ホームページ
ホームページへ