ガメラ
大怪獣空中決戦

1995/03/11 日比谷映画
怪獣映画を大人の鑑賞に堪える娯楽映画にしてくれたことに感激。
興奮覚めやらぬまま劇場から出た。by K. Hattori


 久しぶりに面白い映画を見て、身震いがするぐらい興奮させられました。怪獣映画に何となく偏見があって『ゴジラ』シリーズを観に行かない僕ですが、今回は監督が大好きな金子修介だということで期待していた作品。脚本が『機動警察パトレイバー2』の伊藤和典。特技監督・樋口真嗣の名前も覚えておこう。とにかく期待を裏切らない、ものすごい映画でした。これは絶対今年のベスト10に入るぞ。

 伊藤脚本は細部の日常描写に手を抜かず、平凡な日常生活に非日常の最たる怪獣が突然侵入してくる様子をていねいに描いている。はじめて怪獣を迎えた人間の反応がいかにもそれらしく、主要な登場人物たちが物語に巻き込まれて行く描写にも無理がない。怪獣誕生の設定や行動習性にも、それなりに納得のいく説明があって、なるほどと思わせます。

 ギャオスは肉食で、食糧(人間)をあさるために人口密集地である東京に飛来する。ギャオスが巣を作る東京タワーは、僕が以前勤めていた会社のすぐ近くにあったものですから、これは僕にとってごく近所のお話です。会社は大門にありました。ちなみに僕の住んでいるところは中央区だから、映画の中では避難区域に設定されているところですね。ガメラに攻撃されたギャオスが飛び去る秋葉原も、僕にとっては自転車でひとっ走りの距離。すべてが身の回りで起こっている、なんだか不思議な映画です。

 怪獣の描写に並々ならぬ執念を感じる映画です。怖いとか何とか言う前に、かっこいい。鳥類学者・長峰が謎の鳥を探すために訪れた姫神島で、頭上に開けた木々のすき間を、巨大なギャオスの影が一瞬横切るシーンの素晴らしさ。姫神島から福岡ドームにギャオスを誘導するシーンで、海上の3頭をヘリからのサーチライトが照らし出しているシーンのゾクゾクするような高揚感。ドームの周囲から照らし出したサーチライトに照らされながら、ゆっくりと降下して行くギャオスの姿。そしてガメラ。飛び去ったギャオスを追うため、福岡ドームから飛び立つガメラが、円盤のように回転しながら高速で飛び去って行くシーンのスピード感。海中から水煙をあげながら、一直線にガメラが飛び出すシーンもいい。

 人間側の出演者たちも、みんなよかった。長峰を演じた中山忍は少し芝居が硬いようにも思えるが、ギャオスの正体と危険性を最もよく知る人物という難しい役をうまく演じている。これがデビュー作の藤谷文子は、存在感があって先が楽しみ。伊原剛志も役にピタリとはまっている。小野寺昭のパパぶりもよい。特筆すべきは刑事役・螢雪次朗の粘っこい演技と、自衛官役・長谷川初範の有能そうな軍人ぶり。逆に本田博太郎は、とても環境庁の役人には見えなかった。ちらりと出てくる渡辺裕之の自衛官ははまりすぎ。松尾貴史はちょっと浮いてたかな。


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