ベスト・キッド4

1995/03/05 丸の内松竹
シゲユキ・パット・モリタが今回しごく相手は女の子。
毛色を変えてもアイディアは出がらしで新味なし。by K. Hattori


 どう考えても平均点以下のデキ。ラルフ・マッチオから主演が代替わりして、今度は女の子がカラテ・マスターのミヤギの弟子になるお話だが、女の子がカラテの達人になるというミス・マッチの面白さが最後まで生かされない。稽古のつらさとか、強くなって行く楽しさとか、戦うか否かという葛藤とか、そんな物を全てすっ飛ばしてしまう荒っぽさ。この荒っぽさはどう贔屓目に見ても〈ダイナミック〉などというかこいい物じゃない。単に雑なだけだ。

 物語の展開がどうにも平坦で、起伏がほとんどない。素材としては面白いアイディアがいろいろあるんだから、それがもう少し上手にかみ合うとよかったと思う。これは全部脚本の責任だと思うよ。普通に考えれば、これはもうちょっとなんとかなる映画だと思うけどなぁ。

 両親を事故で失って祖母に引き取られた少女が、カラテの稽古を通じて精神的成長を遂げ、学校にのさばる悪ガキどもをぶちのめし、ハンサムなボーイフレンドもできるという単純な話なんだよ。少女の精神的成長はともかくとして、物語の山場を作るはずの対決シーンが最後まで盛り上がらないのは問題だ。敵役があまり魅力的じゃないんだな。マイケル・アイアンサイド率いる学校内のエリート組織が、実は腕力にものを言わせたナチスの特攻隊みたいな連中で、それと主人公の少女が対立。特攻隊を抜けた男がボーイフレンドになるんだけど、特攻隊の若年リーダーみたいな男が主人公に横恋慕。嫉妬の炎に身を焦がす。最後は定石通りナチスもどきの連中と主人公達の対決になるのだが、頭のいかれたアイアンサイドを途中から生徒たちが見限り、孤立した彼がミヤギにのされて一件落着。単純ね。

 主人公のボーイフレンドの男が、ぜんぜん魅力的じゃないのが不満。〈いい人〉ってのはわかるんだけど、単に血色がいいだけの鈍そうな男じゃないか。愛車のガラスを叩き割られて頭に血が上り、相手を追いかけて行ったあげく、コテンパンにぶん殴られて立てなくなったところをガールフレンドに助けられるんだから世話が焼けるよ。

 今回面白かったのは、ミヤギが主人公と訪れる禅寺の様子。建物の作りはまるっきり修道院なんだけど、中には墨衣の僧侶が何人も生活している。中庭には石庭まであるんだよ。ひょっとして、アメリカにはこうした仏教の寺があるのだろうか。大変興味があります。

 禅の弓道というのも面白かったけど、最高だったのは坊主が3人ラジカセの音楽に合わせて踊るシーン。なんだか突然『天使にラブソングを…』を観ているのかと思いました。また、同じ坊さんたちが町に出てボーリングをするシーンもおかしかったぞ。〈禅ボーリング〉は、ガター知らずだ。すごい!


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