アイ・ラブ・トラブル

1995/01/22 日劇プラザ
ジュリア・ロバーツとニック・ノルティはライバル新聞記者。
二人が恋と事件に巻き込まれるロマコメ。by K. Hattori


 前作『ペリカン文書』は、スター女優ジュリア・ロバーツの復帰を、大勢の俳優たちが支えている雰囲気があった。見ていてどこか危なっかしい感じがあった。あの大事にされようはちょっと痛々しくさえあったなぁ。

 今回のジュリア・ロバーツは、最近ぐっと渋さを増してきたニック・ノルティを向こうに回して、魅力たっぷりの表情を見せてくれる。サスペンス・スリラーの『ペリカン文書』も良かったけれど、彼女にはこうしたちょっと軽いタッチの映画が似合うようだ。ただ、ちょっと軽すぎる……。

 ニック・ノルティは好きな役者だけど、今回はあまり精彩がないな。この役をやるには、ちょっと身体が重たそうだ。もう少しシャープな雰囲気の役者が適役だったかもしれない。例えば、『ペリカン文書』でロバーツの恋人役を演じ、登場したとたんに殺されてしまったサム・シェパードがこの役を演じていたら、映画はずいぶんと雰囲気の違うものになっていたはず。ちょっとイメージしてみる……。おお、これは傑作間違いなしだ!

 男はベテラン新聞記者。近年は事件取材から足を洗い、新聞社の看板コラムニストになっている。最近ではそれにも飽きて、もっぱら小説を執筆中。現在独身だが、ガールフレンド多数。ナンパの達人。

 そんな彼が、事件現場で見かけたライバル者の女性記者。彼女はおざなりな取材でお茶をにごした彼を尻目に、続々とスクープ記事をものにしてゆく。これが男の記者魂に火をつけるのだが、このあたりの描写はテンポも軽快で、見ていて気持ちがいい。タイプライターの文字がオーバーラップしたり、キーボードにロバーツの顔が見えかくれするあたりも、意味は良く分からないがいい感じを出している。

 問題は映画の中盤、登場人物の説明が薄くなって、事件の概要が頭に入らなくなってしまうことだが、この事件そのものは物語の筋と直接関係がないと言えばない。物語の本筋は、ジュリア・ロバーツとニック・ノルティの恋愛模様にある。

 ラスベガスで逃走中に、ひょんなことから結婚式を挙げてしまうくだりは、典型的な会話のすれ違いギャグ。古典的なものだけど、やっぱり面白い。

 ライバル新聞記者同士が、ひょんなことから恋愛に突入するというから、もっとほのぼのしたリラックスムードで物語が展開するのかと思ったら、これが案に相違してミステリー・コメディー仕立ての、そこそこハラハラできる映画に仕上がっていた。これはこれで退屈しない映画なんだけど、僕の好みを言わせていただければ、もっと肩の力の抜ける、古典的なボーイ・ミーツ・ガール映画が見たかった。

 ともかく、これで完全復調したジュリア・ロバーツの次回作に期待しよう。


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