ザッツ・エンタテイメントPART3

1994/12/17 シャンゼリゼ
MGM映画の創業70周年記念映画は夢工場の裏側にスポットを当てる。
続々現れるアウトテイクの数々はファン垂涎の的。by K. Hattori


 真っ暗な劇場の中に鳴り響くオーバーチュア。曲はお馴染み「雨に唄えば」から『フィッシャー・キング』でも使われた名曲「ハウ・アバウト・ユー」を経て、ロジャース&ハートの「ウェア・オア・ウェン」へとメドレー。既にこのあたりで涙腺がちくちくと刺激されていた僕は、この後「虹の彼方に」が流れ始める序曲のクライマックスで既に泣いていました。

 UIPのロゴに続いてMGMのライオンマークが現れ、いよいよ始まった本編の巻頭を飾るのは、やはりこの人、フレッド・アステア。映画は『ジークフェルドフォーリーズ』に出演したアステアの姿から始まり、MGMの超豪華なレビュー・シーンを披露。このシーンに『ザッツ・エンタテイメントPART3』のロゴがかぶさるシーンは、身震いするような興奮と感動が身体を駆け抜けます。

 MGM映画の名場面を集めた、このアンソロジー・シリーズもこれで3作目。全ての作品でホストをつとめたジーン・ケリーが、今回も重要なホストのひとりで登場するのが何より嬉しい。この映画にはケリーの映画デビュー作『フォー・ミー&マイ・ギャル』のシーンも収録されているから、これだけで彼の最も古い出演作から、最新映画までがカバーされているわけです。青春をMGMに捧げたケリー。

 このシリーズの面白さと旨さは、シリーズごとに明確なコンセプトを持って場面を編集し、それなりのホストにそれなりの話をさせることです。1作目はMGM設立50周年を記念した〈社史〉としてのテーマが鮮明。2年後のPART2は、MGMが抱えていたきら星のようなスターたちを紹介する意味で、ややミュージカルからはずれたジャンルまでカバーしたアンソロジーに。そしてこの3作目は、夢工場MGMの裏側にスポットをあてた〈メイキング・オブ・ザッツ・エンタテイメント〉といった趣です。

 撮影や美術スタッフ、メイクに至る裏方の仕事。膨大なアウトテイク(本編でカットされた未使用シーン。NGではないが、上映時間の都合などで割愛される)の数々。どれもこれも、黄金期のハリウッドがいかにパワフルで、エネルギッシュで、クリエイティブだったかを示すものばかりです。

 ミュージカル映画は新作が作られることも久しくなく、いわば死んでしまったジャンルです。しかし、その魅力はいまだに失われることなく、残されたフィルムの中に息づいている。映画のラスト、ケリーの台詞が泣かせます。「歌は終わっても音楽は残る」それがエンタテイメント。バーリンの歌からの引用ですが、これにはジンときました。

 最後は『バンドワゴン』から、テーマ曲の「ザッツ・エンタテイメント」が高らかに歌い上げらてこの映画をしめくくる。最後はやはりアステアです。


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