フォー・ウェディング

1994/10/25
ヒュー・グラントとアンディ・マクドウェル主演のイギリス製恋愛映画。
4つの結婚と1つの葬式の物語。by K. Hattori


 今朝のワイドショーは女優・斉藤由貴婚約の話題で持ちきりです。彼女は相手の男性と出会ってから10日で結婚を決めたそうですが、僕の友人の女性にも、相手の男性に知り合って1週間でプロポーズされ、そのまま結婚してしまった人がいます。つきなみな言葉ではありますが、〈運命〉というものは本当にあるのかもしれませんね。

 出会いはいつも偶然から始まります。主人公のチャールズとキャリーは出会ったときから互いに惹かれますが、そのままスンナリとことが運んだのでは映画になんてなりゃしない。当然紆余曲折があるものの、この紆余曲折具合が並じゃありません。厄介なのは、ベッドを共にしたことが必ずしも愛を確かめあったことにはならない現代の風俗です。チャールズとキャリーは出会ったその日に急接近してロマンチックな夜を過ごしますが、それでも互いにどこかで距離をはかりかねているようなところがある。ささいな言葉のやり取りとすれ違い。ふたりは互いの大切さを充分にわかっているくせに、みすみす別れてしまうのです。どちらが悪いというわけではありません。たぶん現実もこんなものでしょう。

 アメリカ人のキャリーは奔放で積極的な女性に見えますが、最終的なところでは常に受け身にまわってしまう女性です。チャールズはそんなキャリーに翻弄されて、あと一歩彼女に近づくことができない。キャリーが足を止めて彼の接近を心待ちにしても、チャールズはここぞというときに足踏みしてしまう。彼が躊躇するのは臆病なせいか、はたまたキャリーに対する思いやりか、たぶんその両方。キャリーの気持ちを考えるとチャールズの優柔不断な態度にはイライラしっぱなしですが、優柔不断にならざるを得ない彼の気持ちがていねいに描かれた巧妙な脚本と、チャールズを演じたヒュー・グラントのいかにも〈いい人〉然とした演技には嫌味がなく好感を持ちました。

 二枚目俳優ヒュー・グラントが一目惚れする設定にしては、相手役アンディ・マクドウェルにあまり華やかさが感じられませんでした。正統派の美人女優だけど、ただそれだけという感じです。彼女の魅力満載だった『恋はデジャヴ』などに比べると、いくぶん艶消しな印象が否めない。(それでも美人は美人。)僕は彼女がうまい女優だとは全然思えなくて、どちらかというと細やかな演技が苦手で大味な女優だと思っています。彼女を魅力たっぷりに見せるにはそれなりの手順や工夫が必要だと思うけど、今回はあまりそうした工夫が見られないように感じます。

 しっとりとした空気の質感まで写し出すようなカメラは見事。脇役たちも個性的で、見ていて飽きません。英国流のひねったユーモアに大笑い。深刻ぶらずに、肩の力を抜いて観られる娯楽作品です。いかにも今風の恋愛模様がさらりと描かれていて、ちょっと気持ちのいい作品になっています。


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