ノストラダムス戦慄の啓示

1994/09/26 丸の内東映
宗教団体幸福の科学が製作した人類滅亡と救済の予言映画は生憎つまらない。
布教なら布教と割り切って別の作り方があっただろうに。by K. Hattori


 製作が幸福の科学出版、監修が大川隆法と来れば、宗教のPR映画に決まっている。僕は幸福の科学の信者ではないが、大川氏の著書『太陽の法』は角川文庫で読んだことがある。ある程度予備知識があったわけだが、それでも映画の中で描かれる世界の構造については理解に苦しむところがあった。どのような観客を対象にしているのかは知らないが、前提となる世界観についての説明がいかにも不足してると思う。大川氏の熱心な読者だけを対象にした映画であれば説明は不用なのかもしれない。しかし、僕のように古い著書を数冊きり読んだだけの観客や、幸福の科学の教義にまったく無関心だった観客が観れば、この映画はまるきりちんぷんかんぷんだろう。申し訳ないが、僕は退屈で死にそうだった。

 脚本が物語の体裁をなしていない。一応時間軸に沿って物語は進行するが、視点が分散して混乱するばかり。この映画には特に主人公というものはなく、ノストラダムスも語り手のひとりに過ぎない。ノストラダムスは歴史上実在の人物だが、この映画に登場する彼の部屋は霊界に今も存在しているという。これは劇場入口で配布されたリーフレットに書いてあるが、映画中では説明がない。これは独立した映画作品としては不親切だと思うが、いかがだろう。とにかく全体に説明不足すぎるのだ。

 わからない点は、大川氏の著書を読めばわかるようになるのだろう。しかし、もしこの映画が従来の信者や読者以外の人たちをも対象にしているのだとすれば、この説明不足は致命的な欠陥だと思う。

 内容を盛り込み過ぎでまとまりがない。世界の光と闇のバランス、光の天使の輪廻転生と地上での魂修業、ノストラダムスの予言とその成就、神々の歴史への介入、宇宙人の来襲、心の荒廃が世界を破滅させる、救世主エル・カンターレの降臨。どれかひとつを掘り下げてドラマを作れば、何十倍も面白くてわかりやすい映画になったはず。例えば生まれ変わりのドームで来世の親子になることを誓った母と息子にエピソードも、それだけをふくらませて物語にすればはるかに感動的なドラマになり、観客の共感を得られたと思う。一般の観客にとって、教義の絵解きだけが連続する映像など退屈なだけだ。もう少しなんとか観られるものにする工夫をすべきではなかったか。

 ふんだんに使用されているCGはさすがに大画面の迫力。ハイキー調の霊界や、各国語の上に日本語のナレーションをかぶせるコントロールセンターの演出なども面白いと思った。監督は栗屋友美子。この映画が失敗だとすれば、責任はほとんど脚本にあると言ってよい。監督名の下に「第一回監督作品」とあるから第二回もあるのだろう。次回はもう少しましな脚本であることを祈らずにはいられない。

 ひょっとしたら自主製作映画の会議室に書くのが適当な映画かもしれないが、一応この会議室に書いておく。


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