トゥルーライズ

1994/09/13
『ターミネーター』シリーズのキャメロンとシュワルツェネッガーが組んだ、
痛快スパイアクション・コメディ大作。by K. Hattori


 眠気も吹き飛ぶ痛快娯楽アクション大作。この映画の後にどんなアクション映画を作れば観客が驚くのか疑問に思うほど、大がかりなアクションシーンが矢継ぎ早に登場します。映画の見どころを一口で言うのは困難。冒頭からエンディングまで一気呵成に疾走するスピード感は、緩急を付けながら観客を2時間21分楽しませ続けます。この映画を観てから、僕の中ではスピルバーグの名前が少しかすみました。

 今回シュワルツェネッガーが演じるのは、アメリカの秘密諜報組織オメガセクターのベテラン諜報部員。世界を股に掛けて活躍する彼ですが、秘密保持のため家族には身分をコンピュータ・セールスマンと偽っています。法律事務所に勤める妻は、そんな夫との生活に退屈気味。彼女は夫に隠れて他の男と密会するようになりますが、それを察知したシュワルツェネッガーは組織の最新装備を総動員して妻の追跡を始めます。

 主人公ハリー・タスカーを演じるのは、言わずと知れたアーノルド・シュワルツェネッガー。堂々たる体躯でアクションとコメディの両方をこなす彼はまさにこの役にうってつけで、他の誰がこの役を演じてもウソになる芝居を正面から堂々と演じて成功しています。特撮に負けない存在感は、スター俳優ならでは。またタスカーの妻ヘレンを演じたジェイミー・リー・カーティスも、長い手足を振り回しながらシュワルツェネッガーと互角に対峙。生真面目さとしなやかさの同居するこの役柄はカーティスにぴったりで、このキャストを考えた人のアイディアには脱帽です。

 脇役も光ります。中でもタスカーの同僚であり親友でもある諜報部員ギブを演じたトム・アーノルドが抜群。映画ではあまり見ない顔ですがテレビ俳優としては人気があるらしく、シュワルツェネッガーを向こうに回して余裕さえ感じさせる芝居を見せるのにはニヤリ。今後に注目したい俳優です。他にも『ライジング・サン』に顔を見せていたティア・カレルがジェイミー・リー・カーティスとは対照的な悪女ぶりを好演。本業は中古車セールスの迷諜報部員サイモンを演じたビル・パクストンも印象に残ります。アート・マリクのテロリストも小粒ながら悪の匂いをプンプンさせ、少ない登場シーンながらタスカーの上司役でチャールトン・ヘストンが顔を見せているのも印象的でした。

 映画を「映画館向き」「ビデオ向き」に分ける人がいます。僕はこうした分け方に賛同するわけではありませんが、分けたがる人にも必ずや「映画館で観てよかった」と納得してもらえる映画が『トゥルーライズ』でしょう。ジェームズ・キャメロン監督はこの映画に持てる技術の全てを注ぎ込み、近年たぐいまれな傑作娯楽大作を作り上げました。この映画を観ずして1994年の映画は語れません。今どんな映画を観ようか迷っている人がいるなら、まずこれを観るべきです。


ホームページ
ホームページへ