天使にラブ・ソングを…

1993/04/22
ウーピー・ゴールドバーグが修道院でパワフルに歌いまくる。
久々にヒットした傑作音楽映画。by K. Hattori



 「キリストの12弟子の名前を言いなさい」という最初のギャグの意味がわかった人は、日本人にはほとんどいないかも知れない。このシーン、単純にビートルズのメンバーの名前を言ってたわけではないですよ。ポールもジョンも、聖書に出てくるパウロとヨハネの英語読みです。だから、この質問をしたシスターは「リンゴ」という名前が出るまではとりあえず黙っているわけです。(パウロは12弟子じゃないけどね。)まあ、僕も映画を観ているときには気がつかなくて、あとから辞書を引いて確認したんですが……。

 ウーピー・ゴールドバーグがカジノでくすぶっている売れない歌手デロリスを演じています。本人が歌うシーンは一瞬ふき替えかとも思いましたが、どうやら本人自身の声らしい。他のメンバーに比べて若干声が細い気がしました。ステージで歌う曲のアレンジまで全てこなしている人物という設定ですから、多少歌が下手クソでもいいんです。

 デロリス指導による新生聖歌隊が、始めて教会で歌を披露するシーンは素晴らしい。一通りの讃美歌披露が終わった後で突然手拍子が始まり、壇上のシスターたちが身体を左右にゆすりながら、ゴスペル風にアレンジした讃美歌を朗朗と歌います。通りを歩いていた人々が音楽に導かれて続々と教会に入ってくる。観ているこちらまで鳥肌が立つようなコーラスでした。聖歌隊のコーラスはラストシーンまでに数回現われますが、最初のこのコーラス以外はポップスの替え歌みたいになってしまって驚きは少ないです。(それはそれなりに面白いんですけどね。)

 主人公が犯罪に巻き込まれて逃げるというのは、ポップス歌手を修道院の聖歌隊に放り込むというアイデアを実現するための方便でしょう。それでもこのあたりの脚本はよくこなれていて感心します。伏線も生きているしね。最初のデロリスと情夫とのやり取りの中で、情夫のギャングがカトリック信者であることをさりげなく観客にわからせておくあたりはさすがです。まあ、イタリア系のギャングが熱心なカトリック信者であることは『ゴッドファーザー』なんかを観てればわかりますけどね。それでも一応は説明しておくアメリカ映画のサービス精神には頭が下がります。



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