まあだだよ

1993/04/20
内田百間と弟子たちの交流を描いた心温まる映画。
黒澤明の優しい部分が開花した傑作。by K. Hattori



 僕は傑作だと思います。すごく温かい作品です。わからない人にはわからなくてもいいんです。僕は好きですし、感動しました。

 全体を通しての大きな物語はありません。戦前から戦後にかけての、断片的なエピソードが並びます。でも、映画がぶつぶつと途切れるという印象はありません。映画はゆったりとながれながら、僕を映画の中に引き込んで行きます。

 お酒を飲むシーンがやたらと多いのも、僕が気に入った理由かも知れません。先生の自宅で開かれる馬鹿鍋から始まって、えんえん続く宴会シーン。楽しそうでいいな〜。特に第1回摩阿陀会の一連のシーンは見事。先生が大コップのビールを飲み干すシーンから教え子たちのスピーチ、オイッチニの大行進、葬式ゴッコまでが実にリズミカルに描かれている。他にも、焼け出された先生の小屋で先生と井川・所が怪しげな酒を飲むシーンや、ラストで教え子4人が湯飲みで酒を飲むシーンは印象的だった。黒澤の映画で、これほどまでに飲酒シーンが多い映画も珍しいのではないだろうか。撮影中の黒澤組は毎晩のように黒澤邸で酒を飲んでいるらしいのですが、黒澤監督の飲み会ってこんな感じなのかな〜。

 黒澤映画にありがちな説教臭さや分別臭さはすっかりなりをひそめています。白黒時代の作品にあった観客を突き刺すような問題提起はなく、観る人を包み込むような優しい手を感じるのです。劇場を出てきたとき、ニコニコしてました。すごく幸せになれる映画です。すごく優しい気持になれる映画です。黒澤監督の新しい傑作だと思います。



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