魔女っこ姉妹のヨヨとネネ

2013/11/15 東映第2試写室
アイデア満載で未消化な部分も多々あるファンタジーアニメ。
これ1本で終わるのは惜しいクオリティ。by K. Hattori

13111502  「のろい屋」としてさまざまなのろいを掛けたり解いたりすることを仕事にしているヨヨとネネの姉妹は、魔の国に突然現れた奇怪な大樹にびっくり。ヨヨが意を決してその大樹の中に入ってみると、奇妙な扉を通してまったく知らない世界に吸い込まれてしまった……。大樹の正体は人間界にある高層マンション。本来は互いに接点がない魔の国と人間界の間に時空の破れ目ができて、人間界の建物が次々に魔の国に吸い込まれたのだ。人間界の側でも、人間が突然得体の知れないバケモノになる事件が発生。これは魔界の者がかけたのろいに違いない。でも一体誰がどんな方法でのろいを掛けているのだろう? ヨヨは魔界に残っているネネと協力しながら、事件の謎を解き明かそうとするのだが……。

 作画レベルも高くて安心して観ていられる作品だし、物語のスケールも大きく風呂敷を広げてある。しかし映画を観ていても、この作品の本質は「ホームドラマ」なんだろうなぁ……という気がしてしまった。要するに映画版の『クレヨンしんちゃん』みたいなものだ。魔法使いの姉妹を中心にして、それを取り囲む家族がいて、仲間がいて、世界に大事件が起きて、家族と中までそれを解決しようと奮闘する話だ。ここでは世界の破滅と飼い猫(?)の死が、同じ重みを持っている。もちろんその家族にとっては、世界が滅びることより飼っているペットがどうにかなる方が大事件であることはあるだろう。『クレヨンしんちゃん』は世界の一大事と家庭内の大事件を巧みに組み合わせながら、独特の世界を作り上げている。それは映画を観る人たちが、もともと『クレヨンしんちゃん』の世界に親しんでいるからだ。野原家の人々や、ペットのシロや、かすかべ防衛隊の面々に愛着を感じているからだ。

 しかし本作ではどうだろうか。この映画は原作付きではあるが、映像化されるのは今回が初めてだ。テレビシリーズもなければ、映画もない、OVAでの展開もない。その中でホームドラマをやられると、観ている側は物語に出てくる「世界崩壊の危機」と「ホームドラマ」の間で分裂してしまう。登場人物たちには映画に描き切れていない各種の設定(原作にはある設定なのだろうから裏設定と呼ぶべきではないだろうけれど)があるようだが、それをチラチラ小出しにするのは原作ファンには嬉しくても、映画ではじめてこの世界に接する人にとっては、大きな物語の流れを滞留させるノイズに過ぎない。これは映画の序盤でもっとたっぷりと、主人公たち家族について描写しておく必要があったのではないだろうか。

 ただしキャラクターは魅力的だし世界観の広がりもあるので、これをパイロット版にしてテレビシリーズを作ると面白いかもしれない。この映画自体を僕はあまり高く評価しないけれど、単発のこれ1本きりで終わってしまうのはもったいない作品だと思う。

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12月28日(土)公開予定 新宿バルト9ほか全国ロードショー
配給:キングレコード、ティ・ジョイ
2013年|1時間40分|日本|カラー
関連ホームページ:http://www.majocco.jp
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
原作:のろい屋姉妹 ヨヨとネネ
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