恋の渦

2013/07/26 UPLINK FACTORY
バカな男とバカな女が繰り広げる愚かなデキゴト。
笑いながら我が身を振り返ってしまう。by K. Hattori

13072602  若い男女の恋愛をモチーフにした群像劇型のラブコメディだが、これは登場人物たちの中に誰ひとりとして観客の共感を得る人間がいないことで成立している喜劇だ。喜劇王チャールズ・チャップリンは、悲劇と喜劇の違いについてこう言っている。「人生をクローズアップで見れば悲劇、ロングショットで見れば喜劇だ」と。この映画は物語の主人公たちを徹底的に冷たく突き放すことで、彼らが観客からロングショットで見える工夫をしているのだ。その突き放しっぷりは冷酷で残酷だ。しかしここまで冷酷にあしらわれる主人公たちを、観客は気の毒だとは思わないだろう。なぜなら彼らは徹底してバカだからだ。バカがバカなことをやって、バカな目に遭っている。自業自得。身から出た錆。いい気味なのだ。

 だがそんな彼らを見ながら、思わず「こういうことって、あるある!」と突っ込みを入れてしまうのだから困ったものだ。オバカたちのオバカな振る舞いに「あるある!」と突っ込んでいるのでは、その突っ込みを入れている自分自身がオバカだということではないか。幸いなことに、僕はこの映画に出てくるようなバカな行為を、ここ10年近くはしていないはずだが、それは単にこの10年ぐらい異性とのお付き合いから遠ざかっているというだけの話であったりする。ま、それでも構わないわけだが、それでもこの映画を観て「あるある!」と膝を打って笑いながら、その一瞬後にはそのバカさ加減に気付いてジットリと嫌な汗をかく……。この映画はそんな、恐ろしい映画でもあるのだ。

 僕は四捨五入すると50歳になる中年のおっさんだが、映画を観ながら不思議に思ったことがある。それは「今でも男女関係ってこんなもんなのか?」ということ。映画の中では経済的に男女が対等な存在として描かれているし(定職のある女性たちの方が、フリーターや学生である男たちよりも経済的には優位にあるのかもしれない)、女性たちが率先して家事をするわけでもなければ、結婚願望があったりするわけでもない。だがここに描かれている男と女の関係性が、どうしようもなく古くさいもののように僕には思えるのだ。かつての男たちは、「俺様が稼いでいるのだ!」という大義名分によって女性に対して高飛車な態度を取ることが正当化されていた。だがこの映画に登場する男たちに、そんな甲斐性は微塵もない。にも関わらず、彼らは女たちに対して高飛車な態度を取り、女たちはそれを受け入れてしまうのだ。これって、こんなもんなのか? 今どきの若い連中も、男女関係はこんな感じなのかね?

 原作は演劇ユニット「ポツドール」の同名舞台劇で、それを原作者の三浦大輔自身が脚色している。監督は『モテキ』の大根仁だが、本作は山本政志が主催する映画塾「シネマ☆インパクト」で製作された自主映画。撮影期間わずか4日という超低予算作品なのだ。それでいてこの面白さなのだからたまげる。

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8月31日〜9月20日公開予定 オーディトリウム渋谷
配給:シネマ☆インパクト 宣伝:SPOTTED PRODUCTIONS
2013年|2時間18分|日本|カラー
関連ホームページ:http://koinouzu.info
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