モネ・ゲーム

2013/05/02 GAGA試写室
印象派の巨匠モネの贋作を巡る大人同士の騙し合い。
豪華キャストがかえって仇に……。by K. Hattori

13050201  美術鑑定家のハリー・ディーンは、雇い主の美術品蒐集家シャバンダーの態度に真底腹を立てていた。メディア王である彼は金に飽かせて世界中の美術品を買いまくっているが、部下を人間とも思わぬこき使いようで、ハリーは何度もハラワタが煮えくりかえるような思いをさせられているのだ。彼は贋作画家のネルソン少佐と組んで、シャバンダーを一杯食わせる計画を思いつく。シャバンダーが喉から手が出るほど欲しがっているモネの名画「積みわら」の贋作を作り、彼から大金をせしめようというのだ。だが贋作をつかませるにはそれなりの物語が必要になる。ハリーは「積みわら」を持っていても不思議がなさそうなアメリカ人女性PJ・プズナウスキーを見つけ、彼女に協力を依頼したのだが……。

 1966年の映画『泥棒貴族』のリメイクとしてスタートした企画だが、コーエン兄弟の書いたシナリオはほとんどオリジナルになっているらしい。コリン・ファース演じる生真面目な素人詐欺師と、彼の協力者としてアメリカの田舎町から呼ばれたキャメロン・ディアス扮するカウガールの天真爛漫さがこの映画の面白さ。ふたりが友情でも恋愛でもない共犯者としての関係に徹しながら、どういうわけか最後の最後までチグハグで噛み合わないのが楽しい。アラン・リックマンがもめ事の種をまき、キャメロン・ディアスが引っかき回し、コリン・ファースがもめ事を全部引き受ける羽目になるという役割分担も明確で、1時間半のテンポのいいドタバタを楽しめる作品だ。コリン・ファースがパンツ1枚でホテルの窓の外に追い出されてしまうくだりは傑作だ。

 しかしこの映画、話のテンポはいいのに映画の印象が重たい。テーマが重いわけではなく、テンポ良く展開しても話の進み具合に軽やかさがないのだ。例えば、ホンジャマカの石塚英彦(石ちゃん)がスキップしている光景を想像してみてほしい。本人がいかにテンポ良くスキップしていても、見ている人からすれば「重たい」という印象は付いて回るだろう。『モネ・ゲーム』の重たさもそれに似ている。

 重たくなる原因は、登場人物が軒並み中高年のベテラン俳優ばかりだという点にある。豪華キャストが、この映画の重荷になっている。映画が完成した2012年の段階で、コリン・ファースとスタンリー・トゥッチが52歳、アラン・リックマンが66歳、トム・コートネイが75歳、キャメロン・ディアスだってもう40歳なのだ。66歳にして全裸にさせられてしまったアラン・リックマンもかなり痛々しいが、キャーキャー騒ぎながら下着姿にまでなるキャメロン・ディアスはかなり痛ましい。彼女は今でも十分きれいでセクシーだし、この役にもはまっているとは思うのだが、もう10年前にこの映画が作られていれば……。あるいは彼女のために、年相応のキャラクター設定やエピソードが付け加えられていればよかったのかもしれない。

(原題:Gambit)

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5月17日公開予定 TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー
配給:ギャガ
2012年|1時間30分|アメリカ|カラー|シネマスコープ
関連ホームページ:http://monetgame.gaga.ne.jp
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