藁の楯

2013/04/09 ワーナー・ブラザース試写室
単純明快でパワフルなサスペンス・アクション大作。
出演者も豪華で見応えたっぷり。by K. Hattori

13040901  少女に対する暴行殺人で逮捕され服役したものの、出所早々またもや同じような殺人事件を起こして逃走した清丸国秀。遺留物から簡単に彼が犯人だと特定されるが、その直後、全国紙の朝刊各紙に見開き全30段の新聞広告が掲載される。そこには清丸の顔写真と、「この男を殺したら10億円差し上げます」の文字が踊っていた。広告の依頼主は殺された少女の祖父で、財界の黒幕とも言われる大富豪の蜷川ヘ興。この未曾有の賞金額に、日本全体が浮き足立つ。遠い福岡で知人宅に潜伏中だった清丸は、頼りとしていたその知人に殺されかけ、逃げ場はないと観念して最寄りの警察に出頭する。だがそれで彼が賞金首でなくなったわけではない。彼は留置場の中でも警官から殺されかけるなど、常に周囲から命を狙われる存在になったのだ。警視庁は清丸を東京に護送するため、特別チームを編成する。チームのリーダーはSPの銘苅一基。福岡に飛んだ護送チームは大規模な警備体制で清丸の護送を開始するが、そこには次々と賞金目当ての者たちが群がってくるのだった……。

 原作は木内一裕の同名小説で、監督は三池崇史。主人公たちがある場所から別の場所まで移動しようとするが、その間にさまざまな邪魔が入るという、話としてはきわめてシンプルな構成。主人公たちが移動しなければならない理由は、持っている大切なものを目的地まで運ぶためだ。同様のストーリーラインを持つ映画には、黒澤明の『隠し砦の三悪人』がある。滅亡した大名の軍資金と唯一生き残った姫君を連れた一行が、敵の真っ直中を突破していく物語。これをアレンジしたのが、ジョージ・ルーカスの『スター・ウォーズ』だ。『ロード・オブ・ザ・リング』も同系統の物語だろう。『藁の楯』はあちこちアレンジしたりヒネリを入れたりはしているものの、ストーリー自体は古典的でシンプル。こうした素材を手垢の付いたありふれたドラマにするか、それとも骨太でパワフルなドラマにするかは作り手の力量次第だが、この映画は間違いなく後者だ。

 この映画には、ありがちな伏線やどんでん返しがないのがいい。例えば「じつは無実の清丸を口封じするために賞金が賭けられていた」とか、「清丸は本当は好青年だった」とか、物語の表面から見えない裏側が、映画の後半になって明かされるという展開がないのだ。清丸の殺害は単純に復讐のためだし、清丸は正真正銘本物の悪党だ。しかし今どきこうした「単純な復讐」や「正真正銘の悪党」を描くことが、いかに難しいことか。この映画はその難しさに正面からぶつかって、馬鹿力で強行突破してしまう。特にすごいと思ったのは清丸の邪悪さだ。こいつはスゴイ。

 日本では困難な大がかりなアクションシーンを、台湾で撮影しているのがミソ。高速道路を封鎖した大移送シーンは迫力があるし、新幹線内部での銃撃戦にもしびれる。

Tweet
4月26日公開予定 新宿ピカデリーほか全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画 宣伝:る・ひまわり
2013年|2時間5分|日本|カラー|スコープサイズ
関連ホームページ:http://wwws.warnerbros.co.jp/waranotate/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
サントラCD:藁の楯
主題歌CD:NORTH OF EDEN(氷室京介)
原作:藁の楯(木内一裕)
ホームページ
ホームページへ