極道の妻たちNeo

2013/04/01 東映第1試写室
夫を殺された極道の妻が卑劣な敵に殴り込み。
人気シリーズ8年ぶりの復活作。by K. Hattori

13040101  東映実録やくざ路線の後継者として、1986年(昭和61年)からこれまで15作が作られてきた人気シリーズ『極道の妻(おんな)たち』の最新作。当初は岩下志麻、十朱幸代、三田佳子など毎回主演女優をバトンタッチする形で連作されていたが、シリーズ4作目からは岩下志麻の主演で定着して10作目までを製作。その後は製作が東映ビデオに移ると同時に、主演女優も高島礼子に交代してさらに5本が作られた。高島版では第2作の『極道の妻たち/死んで貰います!』が傑作。だがこのシリーズもマンネリ化して、2005年(平成17年)で幕を下ろしている。今回はこの人気シリーズを、8年ぶりに復活させたわけだ。主演は黒谷友香。監督は『借王・シャッキング』シリーズの香月秀之。脚本はプリキュアや仮面ライダーなど、東映系のヒーロー番組でライターを務めてきた米村正二。

 東映が過去の人気シリーズを復活させた作品としては、200年と2003年に製作された『新・仁義なき戦い』や『新・仁義なき戦い/謀殺』がある。これらの映画の出来不出来や評価はともかく、往年のシリーズの現代版を作るに当たって、映画が作られた時代の「今この時」を踏まえた作品作りが行われていたと思う。だが今回の『極道の妻たちNeo』には、そうした気概が感じられない。これは『極道の妻たち』という作品のフォーマットを模倣しただけの、安直なエピゴーネンにしか見えないのだ。今この時に『極妻』を復活させるなら、今この時にしか作れない旬の映画として『極妻』を復活させてほしかった。それは平成25年という今現在の社会風俗を映画に取り込むことかもしれないし、今一番脂の乗っている実力派の女優を主演に据えるということかもしれない。この映画はそのどちらでもない。

 今回の映画の工夫は、ヒロインである琴音の脇に、外部から突然極道の世界に迷い込んだサクラという少女を配置していることだ。極道社会のしきたりや常識をまったく知らないサクラに語りかけることで、極道の妻の意外な一面が知らされるという仕掛けだ。しかし今回はこれも中途半端だし、かえってうっとうしい。中途半端になってしまった理由は、この映画が一方で「実録」のリアリズムを目指しながら、全体としては映画的なファンタジーとしての極道社会を描かざるを得なかったことだ。やくざの名義では不動産が借りられないとか、親の残した借金をチャラにするには相続放棄すればいいという話は実録のリアリズム。しかしやくざ同士が抗争で人を殺しても数年で出所して来るとか、敵対勢力の姉御が巻き舌の下品な関西弁ですごんでみせるのは絵空事だ。もちろんこのシリーズはラストでヒロインがドス1本で殴り込みをする大嘘があるわけだが、この嘘を成り立たせるにはその前にじっくりと映画的なリアリズムで足場を固めておかなければならない。この映画にはそれが完全に欠けている。

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6月8日公開予定 全国ロードショー
配給:東映ビデオ株式会社 宣伝:グアパ・グアポ
2013年|1時間31分|日本|カラー
関連ホームページ:http://gokutsuma-neo.com
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
原作:極道の妻たち(家田荘子)
関連DVD:極道の妻たちシリーズ
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