バレエに生きる

パリ・オペラ座の二人

2012/08/10 シネマート六本木(スクリーン3)
ピエール・ラコットとギレーヌ・テスマーのバレエ人生。
貴重な映像満載のドキュメンタリー映画。by K. Hattori

Ballets  パリ・オペラ座のエトワール(パリ・オペラ座バレエ団の最高のダンサーに対して与えられる称号)として活躍し、現在は同バレエ団で後進の指導にあたっているギレーヌ・テスマー。パリ・オペラ座のプルミエから創作バレエの振付師となり、やがてロマンティック・バレエの復活上演に力を注いだピエール・ラコット。ふたりは1968年に結婚し、今もそれぞれの形でバレエと関わり続けている。この映画は夫妻の現在の生活を取材すると共に、ふたりのインタビューと過去の映像をからめながら、半世紀にわたる夫婦とバレエの関わりを紹介して行くドキュメンタリー映画だ。映画で扱われている時間はおよそ半世紀。この映画はバレエに人生のほとんどを捧げた夫婦の姿を通して、過去半世紀のバレエの歴史を振り返るものになっている。

 僕はバレエにはまったく疎いのだが、ミュージカル映画は好きだ。以前から不思議だったのは、1950年代のミュージカル映画にしばしばバレエを取り入れたナンバーが登場することだった。例えば1951年のMGM映画『巴里のアメリカ人』に出てくる壮大なバレエナンバー。1953年の『バンド・ワゴン』に出てくる「ガールハント・バレエ」。1956年にはジーン・ケリーのバレエ映画『舞踏への招待』が作られている。今回この『バレエに生きる』を観て、1950年代は創作バレエにとっても黄金期だったことを知ることができた。劇中には1950年代から60年代頃に製作されたいくつかのバレエ作品が引用されているが、それらを観ていると「これはミュージカル映画のバレエシーンそのものだなぁ」と思わされる。

 当時は映画業界がバレエ界の動向に触発されてミュージカル映画にバレエナンバーを取り込み、バレエ界もミュージカル映画の視覚的なバレエナンバーに触発されて舞台用の作品を作っていたのかもしれない。1950年代はバレエの世界とブロードウェイ・ミュージカルが交流をした時代でもあり、その中からジェローム・ロビンズ振り付けによる「ウエスト・サイド・ストーリー」のような作品も生み出されている。バレエの世界と、ブロードウェイのミュージカルと、映画会社がそれぞれの才能を持ち寄って成立させたのが、1950年代のミュージカル映画だったのだ。この映画はそれをバレエの世界から垣間見させてくれたという意味で、とても面白いものだった。

 紹介されている各作品のさわりなどはとても素晴らしいものだったが、残念なことに僕が観た試写では貴重な映像の多くがジャギーだらけになっていた。最初は古いVTR素材が劣化しているのかと思ったが、どうやらそういうわけでもないらしく、現在の夫婦を取材したインタビュー映像などでも映像にジャギーが出る。映写環境に問題があったのか、元の素材自体に問題があるのかは不明だが、これはとても残念。劇場上映の際には改善されていることを望みたい。

(原題:Une vie de ballets)

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9月8日公開予定 Bunkamuraル・シネマ
配給:アルシネテラン
2011年|1時間39分|フランス|カラー|1.78:1|ステレオ
関連ホームページ:http://www.alcine-terran.com/ballet/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
関連DVD:ギレーヌ・テスマー
関連DVD:ピエール・ラコット
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