カエル少年失踪殺人事件

2012/03/12 シネマート六本木(スクリーン3)
1991年に韓国で起きた小学生5人の殺害事件を映画化。
前半は面白いが後半がいまひとつ。by K. Hattori

Kaerushonen  1991年3月26日。韓国テグ市の小学生5人が、遊びに出たまま忽然と失踪した。30万人とも言われる捜索態勢で近隣をしらみつぶしに捜索したが行方はわからない。子供たちが出かける前に「カエルを取りに行く」と言っていたことから、この集団失踪は「カエル少年事件」と呼ばれて国民的な関心事になったという。だが数ヶ月もたたないうちに、人々の興味関心は他の事柄に移っていく。テレビを通して必死に我が子に訴えかける家族たちの叫びも、世間からは冷ややかな受け止め方をされるようになる。それからさらに数年後、ソウルのテレビ局で番組中の過剰な演出をヤラセだと批判されたプロデューサーのカン・ジスンが、テグの支局に左遷されてくる。本社に戻るにはここで何か一発大きなネタをつかまなければならない。そこで目をつけたのがカエル少年事件だった。当時のVTRを改めて調べたところ、大学で心理学を教えるファン・ウヒョク教授が意外な観点から事件を論じていた。ジスンはファン教授に呼びかけて、ふたりで事件を洗い直していくのだった……。

 韓国で実際に起きたカエル少年事件の映画化。事件の概略は映画に描かれたとおりだが、狂言回しとなる番組プロデューサーや大学教授は架空の人物だという。この事件は2002年9月に近くの山中で少年たちの白骨化した遺体が発見され、鑑識の結果殺人だと断定されている。だが犯人の手がかりはなく、事件発生から15年後の2006年には時効成立。これは韓国の人なら誰もが知っていることだろうから、犯人が捕まっていないことはネタバレにはならないだろう。

 映画は前半と後半の二部構成だ。前半は主人公のプロデューサーが大学教授と共に事件を推理し、誰もが予想だにしなかった意外な犯人像に突き当たるという謎解きミステリー。後半は少年たちの遺体が発見され、主人公が事件のその後を追いながら、警察が逮捕できない犯人に迫っていくサスペンススリラー。しかし圧倒的に面白いのは映画の前半で、後半は今ひとつという印象だ。映画前半は主人公の行動動機が明確で、登場人物たちの欲望のぶつかり合いから深刻なドラマが生み出されるのだが、後半では主人公の腰が引けていてストーリー展開にスピード感がなくなってしまう。

 主人公の10年を描くのであれば、その10年の間に彼がどう変わったのか、その成長や変化を見たいのだ。彼は大きな失敗をした。その失敗がその後の彼の人生の中でどう生きているのかが、映画を観ていてもわからないのは残念だ。大きな挫折を抱えて年を取り、それでもなおテレビの世界から離れない彼は、そこでどんな番組を作っているのか。部下や若いスタッフたちをどう指導し、彼らに何を期待しているのか。そこでは主人公の過去の失敗が、現在の教訓や糧になっているのか。しかし映画の中の主人公から、それをうかがい知ることはできない。

(英題:Children...)

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3月24日公開予定 シネマート六本木
4月28日公開予定 シネマート心斎橋
配給:コムストック・グループ
2011年|2時間12分|韓国|カラー|スコープ|ドルビー・デジタル
関連ホームページ:http://www.cinemart.co.jp/theater/special/kaerusyounen/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
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