前作『ミッション:インポッシブル III』から5年振りとなる続編で、今回もトム・クルーズ演じるイーサン・ハントが仲間たちと大活躍する。前作でミシェル・モナハンと結婚して幸せな家庭を作ったかに見えたイーサンだったが、今回の映画ではもう彼女と別れてしまっている。アクション・ヒーロー映画では主人公が決してヒロインと幸せな家庭を築けないというのは、『バットマン』シリーズなどでもお馴染みの設定。今回の映画を観ても「ああ、やっぱりそうか」と思わされたわけだが、このことが映画の後半にからむ大きな伏線になっているなんて事は、この時点ではたぶん誰も考えていないと思う。「ああそうか」で終わる話が映画の中盤で蒸し返され、さらに後半でそれにまつわる真相が明かされて愕然とし、さらにエンディングで不覚にもホロリと泣かされてしまった。「ヒーローは決して幸せな家庭を築けない」というアクション映画のセオリーを、うまく逆手に取られた気分だ。
今回の映画でイーサンたちの敵になるのは、人類の新たな進化をうながすため、最終戦争を起こして文明を一度滅ぼしてしまおうと考える過激な終末論者だ。これはアクション映画の敵役としては、相当に過激な連中だろう。普通の悪党は何らかの事件を起こして自分が生き残ることを考えるのだが、今回の敵は自分が生き残ることなど最初から考えていない。目指すのは破壊のみであって、そのために自分の命を投げ出しても悔いがないと考えている。オウム真理教も最終戦争を起こそうとしたが、それでもあの連中は自分たちだけうまく立ち回ってそこから生き残ることができると考えていた。しかし今回は違う。敵は強固な信念で結束した少数グループであり、優れた技術力と情報収集能力を持ち、リーダーがひとりで危険な状況下に飛び込んでいく大胆さもある。要するに「世界を救う」という目的を持つIMFと同等の能力を持ちながら、「世界を滅ぼす」という目的で動いている連中が今回の敵なのだ。敵のリーダーとイーサンは瓜二つでありながら、ネガとポジのような対称関係になっている。
冒頭からダイナミックなアクションシーンが連続する映画だが、今回の映画で最大の見せ場は予告編にも登場するドバイの超高層ビル、ブルジュ・ハリファでのスタントだろう。このビルの高さは828メートルで、現在工事中の東京スカイツリーよりさらに高い(尖塔を除いたビル本体の高さだけでも636メートル)。トム・クルーズがこのビルを素手でよじ登るシーンは、実際のビルで、トム・クルーズ本人がスタントマンを使わずに撮影していたというから驚きだ。もちろん撮影用のハーネスを付けたり、足場を組んだり、部分的に他の箇所で撮った映像と組み合わせたりという映画的なトリックは使っているのだろうが、映画を観ているときはそれを忘れそうになる。終盤の立体駐車場のシーンも面白い!
(原題:Mission: Impossible - Ghost Protocol)
サントラCD:Mission: Impossible - Ghost Protocol
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