マシンガン・プリーチャー

2011/11/30 京橋テアトル試写室
内戦の続くスーダンで武器を取って戦うアメリカ人牧師。
なんとこれが実話だそうです。by K. Hattori

Machingunpreacher  バイカーギャングとして酒と麻薬と暴力にどっぷり浸かって生きてきたサム・チルダースは、1992年に妻の影響でキリスト教の洗礼を受ける。新たにはじめた建設業の仕事も成功し、ようやく世間並みの暮らしができるようになった家族。同じ頃、教会にアフリカの窮状を訴えに来た牧師の話を聞いたチルダースは、仕事の合間にアフリカでボランティア活動をしようと決意。訪れた北部ウガンダで建設作業の手伝いをしていた彼は、スーダン人民解放軍のデンという兵士と親しくなる。この機会に見聞を広めておきたいと考えたチルダースは、デンにガイドを頼んでスーダンに入国。だが彼がそこで見たのは、ゲリラ組織である神の抵抗軍(LRA)に襲われて傷つき、殺されている人々の姿だった……。

 サム・チルダースは実在する牧師で、ペンシルベニア州の自分の教会で説教しながら、アフリカに出かけて孤児院を開設し、誘拐された子供たちを救出するために武器を取ってLRAと戦ってきた。彼の人生は波瀾万丈そのもの。バイカーギャングから回心して牧師になるだけなら『親分はイエス様』(これも実話)と同じだが、荒廃した生活を建て直して模範的なクリスチャン生活をはじめたと思ったら、そこから振り子が大きく反対側に振り切れ、アフリカでマシンガン片手にゲリラ兵と戦う傭兵まがいの活動を始めるのだ。彼の活動が知られるようになったのは、2005年にNBCのニュース番組「デイトライン」がスーダン情勢についての特集の中で彼を紹介したのがきっかけだったという。牧師のくせに武器を持って戦うとはナニゴトかという批判は当然多いようだが、彼は「もしあなたの子供が誘拐されて、私が連れ戻してあげると言ったとしたら、その方法を問うだろうか?」と述べている。

 映画はチルダースが実際に体験したエピソードをもとにしているのだが、脚本はクライマックスの構成がやや弱い。主人公が回心し、アフリカで衝撃を受け、牧師になり、アフリカに孤児院を作り、ゲリラと戦いはじめるまでは話がスムースに流れていく。ただしその後、彼の大きな挫折となる事件が弱く、彼が信仰を見失って生活が荒れていく部分に共感が持てない。挫折のきっかけとなる事件以前にも、彼は悲惨な現実を何度も見ているのだから、この事件については映画を観ている側も、主人公と一緒に挫折感に打ちのめされるような衝撃がほしい。またこの挫折から主人公が立ち直るきっかけも動機が不充分だし、主人公の立ち直りを示すエピソードも映画を観ていて心にストンと落ちるようなものがない。

 エンドロールにはチルダース本人が登場してしまうのも、この手の映画としては抑制のタガが外れてしまっている。伝記映画で最後に本人の写真が1枚出てくるぐらいのものはよくあるが、ここまで本物を大きく扱った映画も珍しい。なんだか映画全体が本人の宣伝みたいで、ちょっと嫌な感じなのだ。

(原題:Machine Gun Preacher)

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2012年2月4日公開予定 ヒューマントラストシネマ有楽町
配給:日活 宣伝:樂舎
2011年|2時間9分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|ドルビーデジタル、DTS
関連ホームページ:http://mgp-eiga.com/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
サントラCD:Machine Gun Preacher
原作洋書:Another Man's War(Sam Childers)
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