ピザボーイ

史上最凶のご注文

2011/11/14 SPE試写室
宅配ピザの届け先で銀行強盗を共用される青年の運命は。
実在の事件に着想を得たコメディ映画。by K. Hattori

Pizza_boy  定職に就くこともなく親のスネをかじって生活しているドウェインと友人トラヴィスは、親の遺産100万ドルを手に入れるため殺し屋を傭うことを考える。問題は殺し屋を傭うため必要な10万ドルだ。悪知恵の働くドウェインは、ピザの配達人を強盗に仕立て上げることを考える。廃車置き場に呼び出された間抜けなピザ配達人に時限爆弾の装着されたベストを着せ、制限時間以内に銀行から10万ドル強盗してこいと脅迫するのだ。この悪辣な計画に巻き込まれたのが、町のピザ屋で働くニックだった。爆弾ベストを着せられたニックは親友のチェットを協力者に引っ張り込み、何とか銀行から金を奪うことに成功するのだが……。

 『ゾンビランド』でコンビを組んだルーベン・フライシャー監督とジェシー・アイゼンバーグ主演のアクション・コメディ映画。最初から最後までいろいろなギャグが詰め込まれているのだが、最初から最後までそれがはじけた笑いに結びつかない残念な作品。少なくとも僕はこの映画を観ても、最後にちょっと嫌な後味が残る。それはこの映画を観て、映画のモデルになったであろう現実の事件を思い出してしまうからだ。それは2003年8月に、アメリカのペンシルベニア州で起きた「首輪爆弾強盗事件」。ピザ配達人が配達先で首に時限式の爆弾を取り付けられ、銀行で金を奪ったあとに取り囲む警官や報道陣が見守る中で爆死した事件だ。この様子は全米にテレビ中継され、爆死の瞬間のニュース映像は今もネットで見ることができる。今回の映画は誰がどう見ても、この事件がアイデアのルーツになっているのだ。

 実在の事件をモデルに映画を作る例など山ほどあるし、残酷な事件をコメディにする例だって多い。喜劇王チャプリンは、フランスの連続殺人鬼の実話をもとに『殺人狂時代』を作っている。しかもそれは傑作だ。首輪爆弾強盗事件だって、作りようによっては面白い映画になっただろう。だが今回の映画はダメだ。主人公の年齢を実際の事件の被害者(?)の年齢より若く設定したり、共犯者になる親友を配置したり、ガールフレンドとのロマンスをからめたり、真犯人たちを間抜けな二人組にして笑いを取ろうとしたり、殺し屋が乗り込んできて話を引っかき回したりと作劇上の工夫は随所に見られるのだが、いかんせん「ピザ屋の配達人を爆弾で脅して銀行強盗をさせる」という部分が現実の事件と同じでありすぎる。素材が生で目の前に突き出されているので、映画を観るとどうしたって現実の爆死映像を思い出してしまうのだ。

 現実の事件を差し引いても、この映画の脚本には弱いところが多い。主人公の親友チェットが共犯になるのもそのひとつだし、殺し屋の出し入れもギクシャクしている。強盗にあっさり成功するのはともかく、その後あっと言う間に警察から逃げられるのも不自然だ。脚本がもう少し緻密にできていれば、映画は映画として楽しめるものになっただろうに。

(原題:30 Minutes or Less)

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12月3日公開予定 ヒューマントラストシネマ渋谷
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 宣伝:スキップ
2011年|1時間22分|アメリカ|カラー|スコープサイズ|SDDS、ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.pizza-boy.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:ピザボーイ 史上最凶のご注文
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