香港四重奏+香港四重奏II

2011/10/28 シネマート六本木(スクリーン1)
香港を舞台にしたオムニバス映画2部作8作品。
食欲をそそられる1本目が好き。by K. Hattori

Tiff2011  香港を舞台にしたオムニバス映画。15分ほどの短編を4本まとめて『香港四重奏』。その続編が『香港四重奏II』なのだろうが、映画祭では2本まとめて短編8本立てのボリュームになった。オムニバスにはいろいろな作り方があり、ひとりの監督が4つのエピソードを連作することもあれば、別々の監督が4本をそれぞれ作ることもある。エピソードごとにストーリーや設定がどこかしらつながりあって大きな世界観を共有していることもあれば、個別にばらばらの独立した短編が集められたものもある。『香港四重奏』2部作計8本の短編は、監督もばらばらなら設定もばらばら。監督には香港の人もいれば、フィリピン、マレーシア、タイの監督もいる。それらが寄り集まって作った映画は、共通しているのが「香港」という舞台設定だけだ。以下、各作品の感想。

 『香港四重奏』の幕開けは、香港のベテラン監督ハーマン・ヤオの「もち米炒飯」。急激に変わりゆく香港の風景と過去の歴史を、もち米炒飯に象徴させた作品。主人公の少年と、屋台で炒飯を売る老婆の交流。観ているとお腹がすいてくる。2本目の「レッドアース」は、デジカメで撮影した静止画像と主人公(ダニエル・ウー)のナレーションで綴る、香港版「ラ・ジュテ」のような作品。ちゃんとラブストーリーで、ちゃんとSFなのも、「ラ・ジュテ」譲り。監督はクララ・ロー。3本目はヘイワード・マックの「恋は偏屈」で、香港の夜をさまよう男女ふたりの若者をカメラがどんどん追い掛けてゆく。このふたりにどんな関わりがあるのかが、映画の最後に明らかにするのがアイデア。主演のふたりはどちらも素晴らしいが、ヒロインを演じたケイト・ヨンが特に印象に残る。最終話はフルーツ・チャン監督の「黄色いサンダル」で、これはグラフィカルな映像処理も相まって強烈な印象。端役女優だった母親を回想する青年の独白で、映画の街・香港に対する愛情がたっぷり詰まった作品だ。

 『香港四重奏II』は国際色豊かな作品。1本目の「パープル」はフィリピンのブリランテ・メンドーサ監督作で、妻に先立たれた老人と、彼女と喧嘩した青年の物語を交互に描く。どちらのナレーションもなぜか英語。2本目はマレーシア人監督ホー・ユーハンの「機密漏れ」で、マレーシア人刑事に協力する香港警察と、謎めいた男が泊まる安ホテルにまつわるシュールなコメディ。いろんな意味で「人を食った映画」だと思う。3本目はタイのアピチャッポン・ウィーラセタクンの「Mホテル」。マンションの一室でだらだら過ごす青年を、少しにじんだような映像で撮り続ける作品だが、声が水中で録音したようなモゴモゴしたもの。香港のマンション暮らしを、水槽の中の魚にたとえているらしい。最後を締めくくるスタンリー・クワンの「上河図」は、観光地に向かうバスに乗り合わせた乗客たちの様子を描く、小粒ながらパンチの効いた作品。

(原題:香港四重奏 Quattro Hong Kong/香港四重奏II Quattro Hong Kong 2)

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第24回東京国際映画祭 アジアの風
配給:未定
2010年|2時間3分|香港|カラー
関連ホームページ:http://2011.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=115
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:香港四重奏
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