ヴァンパイア・ストーリーズ

CHASERS

2011/09/28 relationsデジタル試写室
吸血鬼に咬まれた青年が自分を咬んだ吸血鬼と対決。
アイデアは面白いんだけどなぁ。by K. Hattori

Vs_chasers  同じスタッフとキャストで作られた『ヴァンパイア・ストーリーズ BROTHERS』の姉妹編。物語の発端は『BROTHERS』と同じ学生たちによるミニ旅行だが、体調不良で一足先に東京に戻ったセイとミドリを見送った後、山荘に残った6人の大学生たちのその後を描く。こうして物語の導入部で『BROTHERS』から分かれて独自路線に向かった『CHASERS』は、物語の最後で再び『BROTHERS』に合流する。

 サークルの旅行で山荘を訪れていたシュウは、以前から気になっていたヒサコを追って夜中に山荘を離れた際、森の中で黒い影に襲われて意識を失う。気づくとそこは見慣れない山小屋の中。そこでシュウを看病していたアサギという男は、シュウに衝撃的な事実を告げる。シュウはヴァンパイアに襲われて一度死んだものの、ヴァンパイアとして復活したのだ。このままだと、いずれシュウは自分を咬んだマスター・ヴァンパイアの奴隷として永遠の命を生きることになる。そうならない唯一の道は、7日以内に自分を咬んだマスターを見つけ出して殺すこと。じつはアサギも今から200年ほど前にヴァンパイアに咬まれたが、運良く自分を咬んだマスターを倒して自由を手に入れていたのだ。アサギの手助けを借りて、自らのマスターを追跡し始めるシュウ。しかし旅の途中で出会ったのは、同じマスターに咬まれてヴァンパイアとなったヒサコだった。ヒサコはマスターの居場所として、廃工場にシュウとアサギを案内するのだが……。

 姉妹編の『BROTHERS』は生き別れのヴァンパイア兄弟を主人公にしたメロドラマだったが、『CHASERS』は逃げる敵を追い掛けるアクション映画。『BROTHERS』に登場しなかったアサギというヴァンパイア・ハンターが、ヴァンパイアになったばかりのシュウを一人前のハンターへと成長させてゆくバディムービーであり、山梨の森の中から東京郊外での決戦まで主人公たちが移動してゆくロードムービーでもある。バディムービーやロードムービーというのは形式の拘束力が強いので、これだけで映画としては一応まとまったものになる。ただし細部の詰めは脚本演出ともに散漫で、もっと張り詰めたドラマを作れるはずの部分で、弛緩しきった展開になっているのは残念。

 主人公シュウには、友人たちを殺されたショックもあれば、家族と二度と会えなくなる悲しみなど、複雑な感情がたくさんあるはず。逆にヒサコには、わずらわしい人間関係の呪縛から逃れる開放感がある。こうした複雑な感情を掘り下げることで心理的な葛藤のドラマが盛り上がったはずなのに、映画はそれらを一切捨てて、シュウのヒサコに対する恋愛感情だけを抽出してドラマの中心に据える。最後のマスターとの対決シーンで、戦いの真っ最中にまでこのベタベタした話を持ち込むのは興ざめもいいところだ。普通に作ればもっと面白くなるだろうに。

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10月15日公開予定 ユナイテッド・シネマ豊洲
配給:ブロスタTV、Thanks Lab.
2011年|1時間15分|日本|カラー
関連ホームページ:http://vs-movie.com/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
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