新少林寺

SHAOLIN

2011/09/02 アスミック・エース試写室
20世紀初頭を舞台にした少林寺映画の最新作。
少林寺のセットがすごい。by K. Hattori

Shaolin  辛亥革命によって清王朝が倒れた直後の1912年。中国は各地に興った軍閥によって支配され、列強諸国も中国国内の混乱に乗じて利益を得ようとしていた。群雄割拠の戦国時代さながらの世の中で、人々の心はすさみ、庶民の暮らしは困窮していく。武術で有名な嵩山少林寺も、そんな社会の荒波の中にあった。近隣一帯を支配したのは血も涙もない冷酷な候杰(こうけつ)将軍と、彼の義兄弟でもある宋虎(そうこ)将軍。候杰は義兄の宋虎将軍を暗殺して全権を握ろうとするが、腹心の曹蛮(そうばん)に裏切られて逆にすべてを失う。愛娘は死に、愛する妻にも去られ、かつての部下たちに命を狙われる身となった候杰は、逃げ込んだ少林寺で修行僧として働き始める。厨房を手伝い、書を読み、武術の鍛錬をし、寺の門前に群がる避難民たちの世話をする日々。候杰の心は、少しずつ癒されていくのだが……。

 少林寺を舞台にした映画としては1982年の『少林寺』が有名だが、ジェット・リーの出世作となったこの映画は7世紀の中国が舞台。今回の『新少林寺 SHAOLIN』は20世紀初頭の中国が舞台で、82年の『少林寺』と内容的なつながりがあるわけでは無い。清朝末期から辛亥革命を経て日中戦争に至る20世紀初頭の中国は数々の武術映画で取り上げられているが(『ドラゴン怒りの鉄拳』も『ワン・チャイ』シリーズも『イップ・マン』もこの時代が舞台)、『新少林寺』もその時代に物語を移して、中国近代史の中での少林寺をリアルに描こうとしている。リアルと言えば、この映画は本物の少林寺が監修した初めての映画で、映画に登場する少林寺は2千万元かけて作った本物の少林寺のコピーだ。少林寺は曹洞宗(禅宗)の寺院でもあるのだが、劇中では修行僧たちの生活ぶりなども描かれていて、登場人物たちの所作などに丁寧な取材振りがうかがえる。

 アンディ・ラウ演じる主人公の候杰が、自分からすべてを奪い取った曹蛮(ニコラス・ツェーが演じている)に復讐するのではなく、彼を赦し改心させることで救おうとするという展開が、この手の映画にしては珍しい。復讐よりも赦しだなどと言うとまるでキリスト教だが、これが仏教の上に乗っかっている。カンフー映画にしてはややバタ臭く、モダンな感じの映画になっているのはそのためだ。映画の導入部で少林寺に銃弾を撃ち込んだ主人公が、すっかり改心して最後は仏の手の中で安らぎを得る。復讐劇が最後は宗教的救済の物語になるなんて、まるで『ベン・ハー』だ。(馬車同士の競争もあるぞ!)

 アクション専業スターというわけではないアンディ・ラウが主演なので、クライマックスの大乱闘で主人公を中心にアクションを組み立てられず、主人公が大勢の修行僧の中のひとりになってしまう。しかし世の栄達を求めた男が無名の僧になる話だから、これはこれでよかったのかもしれない。

(原題:新少林寺 SHAOLIN)

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11月19日公開予定 TOHOシネマズ六本木ヒルズ
配給:ブロードメディア・スタジオ、カルチュア・パブリッシャーズ
パブリシティ:フリーマン・オフィス
2011年|2時間11分|香港、中国|カラー|シネマスコープ|ドルビーSRD
関連ホームページ:http://shaolin-movie.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:新少林寺 SHAOLIN
関連DVD:ベニー・チャン監督
関連DVD:アンディ・ラウ
関連DVD:ニコラス・ツェー
関連DVD:ファン・ビンビン
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