カウボーイ&エイリアン

2011/08/31 パラマウント試写室
19世紀末のアメリカ西部をエイリアンが襲撃する。
豪華キャストのSF西部劇。by K. Hattori

Cowboyandarien  砂漠のど真ん中で目を覚ましたひとりの男。なぜか下着姿で、腹には大きな傷があり、左手には見慣れない金属製の手かせが付いている。一体何が起きているのか、頭がボンヤリして思い出せない。自分が何者なのかすらわからないのだ。その後は通りがかりの賞金稼ぎから服と銃を奪い取り、近くの町では有力者ダラーハイドの馬鹿息子と一悶着。酒場で空きっ腹にウィスキーを流し込んでいると、お尋ね者の無法者ジェイク・ロネガンとして逮捕されてしまう。だが彼を護送する馬車が出発する夜になって、町にはまばゆい光を放つ謎の飛行物体が飛来。奇妙な光線で町の建物を破壊し、人々をさらって行くのだった……。

 ダニエル・クレイグとハリソン・フォード主演の、SFアクション西部劇。タイトルだけ見ると『フレディ VS ジェイソン』や『エイリアン VS プレデター』のようなB級映画だが、主演にスター俳優を招いていることからもわかるように、たっぷりと予算をかけた大作映画になっている。流れ者のガンマンが、衰退しかけていた西部の町を救うというのが一番外側にある物語の枠組み。ここにグッド・バッドマン(悪人が成り行きから善行をして回心する)のモチーフを入れ、主人公と娼婦のロマンスを入れ、たたき上げのたくましい親父とひ弱な跡取り息子の確執という話が入り、荒くれ者の町で神の言葉を語る型破りな牧師や、白人に育てられた先住民の青年がいる。酒場での殴り合いがあり、馬から高速の乗り物に飛び移るスタントがあり、先住民の襲撃がある。西部劇らしい描写が、あちこちに散りばめられているのだ。

 ただしここに出てくる西部劇の要素は、「古き良き時代の西部劇」からの寄せ集め。物語は宇宙人に誘拐された人々をどう救出するかが中心で、そこに主人公の正体は何者で、腕に付けられている奇妙な武器はどこで手に入れたのかがからむ。要するにメインのプロットは、西部劇とまるで何の関係もないのだ。物語の味付けとして盛り込まれている西部劇の要素を、もう少しメインプロットにからめていくと西部劇としての「らしさ」が大きくなっただろう。それは戦争(南北戦争)が残した心の傷でもいいし、時代の変化に取り残されながら生き方を変えられない男の矜恃でもいい。この映画の持つ西部劇としての意匠には十分満足だが、僕はそこにあと一歩のテーマ性を求めたくなってしまう。

 逆にこの映画のSF要素については、説明しすぎてやや興ざめだ。エイリアンの襲来目的はプロットの外側にあるものなのだから、そこをあまり言葉で説明する必要はなかったと思う。むしろエイリアンが人間を誘拐する話を、もう少し膨らませた方がよかった。登場する人間たちの関心事は「誘拐された人間」にあって、他のことはどうでもいいのだから。

 そんなわけで多少バランスの悪いところもある映画だが、登場するキャラクターの魅力が弱点をカバーしていると思う。

(原題:Cowboys & Aliens)

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10月22日公開予定 丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
2011年|1時間58分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|DTS、SRD、SDDS、SR(シアンダイ)
関連ホームページ:http://www.cowboy-alien.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:カウボーイ&エイリアン
サントラCD:カウボーイ&エイリアン
原作:カウボーイ&エイリアン
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