リメンバー・ミー

2011/07/11 シネマート試写室(シネマート六本木3)
ロバート・パティンソン主演の青春ラブストーリー。
映画そのものに大きな仕掛けがある。by K. Hattori

Remamberme  22歳の誕生日を目前に、タイラーの心の中にはぽっかりと大きな穴が空いている。22歳というのは、兄のマイケルが自殺した年齢なのだ。タイラーはいまだ兄の死を受け入れられないまま、死んだ兄に向けた言葉をノートに書き綴り、大学の聴講生をしながらぶらぶらと時を過ごしている。離婚して家族を捨てた父との軋轢。学校でいじめられているらしい妹への気遣い。大学生活をエンジョイするルームメイトで親友のエイダンはいい奴だが、そのあまりに楽天的で脳天気な態度にウンザリさせられることもある。タイラーの心は、行方を見失って道に迷っている。自分は何になりたいのか、どんな道に進みたいのか、自分はいったい何者なのか、すべてわからないまま22歳という年齢になってしまう。だが彼のそんな暮らしは、ひとつの出会いをきっかけに大きく変わっていくのだ……。

 数々のテレビドラマで演出を手がけ、『ハリウッドランド』で映画監督デビューしたアレン・コールターの新作は、ニューヨークを舞台に、ひとりの青年と家族、恋人との関係を丁寧に描いた「愛の物語」。家族との絆を見失っていた青年が再び自分の家族を取り戻して行く家族愛の物語であり、自分自身すら愛することを忘れていた青年が、恋人との関係の中で再び自分自身の生きる力を取り戻して行く物語でもある。主演は『トワイライト』シリーズのロバート・パティンソン。恋人アリーを演じるのは「LOST」に出演していたエミリー・デ・レイヴィン。タイラーの父親を演じるピアース・ブロスナンとレナ・オリン、アリーの父を演じるクリス・クーパーが、安定感のあるドラマ空間を作り上げている。特にこの映画のブロスナンは素晴らしい。クリス・クーパーは映画冒頭のエピソードに登場した瞬間から、この映画で演じるキャラクターをしっかりと掴み取ってしまう。

 決して明るい映画ではない。映画はヒロインのアリーが目の前で強盗に母を射殺されるというショッキングな場面で始まり、タイラーのエピソードでは常に自殺した兄の問題が重くのしかかっている。死は誰の人生にも平等に訪れると言うが、それは嘘だ。世の中には周囲の人間がその死に納得できる、いわば社会的に公認された死と、そうではない死がある。突然強盗に殺されてしまうとか、若くして自殺してしまうというのは、不合理で理不尽な死として周囲の人間をいつまでも苦しめ続けるのだ。しかし人は生きていかねばならない。そうした不合理で理不尽な死を乗り越えて、人は今日を生きねばならない。そしてそのための力を与えてくれるのは、人と人との絆に他ならない。それを「愛」と言い換えてもいいだろう。

 物語の結末は悲劇的だ。しかし映画を観た人は、この映画の登場人物たちがこの悲劇を乗り越えて「今を生きる」ことができる人たちだと知っている。どれほど大きな悲劇に見舞われようと最後に希望が残る限り、この物語はハッピーエンドなのだ。

(原題:Remember Me)

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8月20日公開予定 シネマート新宿
配給:ツイン 宣伝:樂舎
2010年|1時間53分|アメリカ|カラー|1:1.85|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.cinemacafe.net/official/rememberme/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:リメンバー・ミー
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