パラダイス・キス

2011/05/18 ワーナー・ブラザース試写室
同名人気コミックを北川景子と向井理主演で映画化。
学校の雰囲気が個人的には懐かしい。by K. Hattori

Parakisu  名門進学校に通う早坂ゆかりは、街を歩いているときに奇妙な風体の男にスカウトされる。その男の通う学校で行われるファッションショーで、モデルにならないかというのだ。ファッションにもモデルにも興味のないゆかりだったが、半ば強引に彼らのアトリエに連れ込まれてしまったことから、彼らとの付き合いが始まる。自他共に認める天才デザイナーのジョージに見つめられ、気持ちが動揺するのを感じるゆかり。母親と衝突して家を飛び出した彼女はジョージのマンションの一室に同居することになり、そこで彼の繊細な想像力の秘密を垣間見てしまう……。

 大ヒット映画『NANA』の原作者でもある矢沢あいの人気コミック「Paradise Kiss」(略して「パラキス」)を、『Life 天国で君に逢えたら』や『僕の初恋をキミに捧ぐ』の新城毅彦監督が、北川景子と向井理主演で映画化した青春ラブストーリー。物語としてはずいぶんと盛りだくさんで駆け足の印象があり、主人公であるゆかりとジョージの心情変化などはキャラクターの彫り込みが甘いと思う。状況を台詞で説明することが多く、話はどんどん先に進んでも、登場人物の内面が広がっていかないのだ。

 これは主演ふたりの個性によるものもあるかもしれない。僕は北川景子や向井理にどうも感情移入しにくいのだ。北川景子は『花のあと』も『瞬 またたき』もピンとこなかった。向井理は「ゲゲゲの女房」はよかったが、他のどの作品を見ても水木しげる役のぼんやりマイペースの雰囲気がちらついてしまう。どちらも人気はあるのだろうが上手い役者ではないし、かといってスターとしてのオーラがぎらぎら輝いているわけでもない。クールで表情を崩さないこのふたりのツーショットは、それだけで周辺より2度ぐらい体温が低そうなのだ。もともと平熱が低いので、ふたりの関係が盛り上がって熱くなっても、それではこちらに熱気が伝わってこない。

 ならばこの映画がつまらないかというと、僕は必ずしもそうではなかった。それは僕がデザイン学校出身者で、この映画に出てくるようなデザイナーの卵たちを、実際に身近で見ていた経験があるからかもしれない。映画に登場するデザイン学校は高校なのだが、そこで描かれている世界は専門学校だ。原作者の矢沢あいは大阪モード学園出身(中退?)らしいが、僕は桑沢デザイン研究所のグラフィックデザイン専攻卒。桑沢はドレスデザイン科があったので、ファッション業界を目指す学生たちとは親しくないにせよ接点があった。学内の雰囲気などは、この映画に登場する学校に少し通じるところがある。服装が派手でちゃらちゃらして見えるが、やっていることは真面目なのだ。才能のある学生は大手メーカーや有名事務所への就職を目指すが、それよりもっと才能のある者は卒業と同時に一本立ちして起業する。ジョージたちのブランド「パラダイス・キス」には、そんな学生の夢が詰まっている。

Tweet
6月4日公開予定 丸の内ルーブルほか全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画 宣伝:る・ひまわり、T-Basic
2011年|1時間55分|日本|カラー|ビスタ・サイズ|SR、SRD
関連ホームページ:http://www.parakiss.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:パラダイス・キス
サントラCD:パラダイス・キス
関連書籍:『パラダイス・キス』official 紫 by 北川景子 Fashion Photo BOOK
ノベライズ:パラダイス・キス
原作:Paradise Kiss(矢沢あい)
アニメ版DVD:パラダイス・キス
関連DVD:新城毅彦監督
関連DVD:北川景子
関連DVD:向井理
ホームページ
ホームページへ