キッズ・オールライト

2011/04/01 ショウゲート試写室
思春期の子供が「遺伝子の父親」を探し出したとき両親は……。
充実キャストの大人のコメディ映画。by K. Hattori

Kidsallright  ニックとジュールスは一緒に暮らし始めて20数年になる同性婚カップル。精子バンクを利用して生んだ18歳の娘ジョニと、15歳の息子レイザーを含めた4人暮らしだが、ジョニは間もなく大学進学のため家を離れる予定になっている。姉の独立を前に、レイザーはそわそわと落ち着かない。18歳になった姉なら、精子バンクに問い合わせて自分たちの父親が誰なのか知ることができるのだ。やがて自分たちの「遺伝的な父」であるポールと初対面を果たした子供たちだったが、このことを知ったニックとジュールスは、子供たちだけで「父」に会うのは良くないと考え、ポールを家での食事に招待する。ところがこれがきっかけで、一家はさらなる厄介ごとを抱え込む羽目になるのだった……。

 実力派俳優たちによる見事なアンサンブルに舌を巻く、ちょっと大人向けのコメディ映画。お色気路線という意味での「大人向け」ではなく、人生の酸いも甘いも噛み分けた大人にこそ楽しめるであろう映画という意味。結婚って何だろう。夫婦って何だろう。子供と暮らすって、子育てって何だろうか。そんなことを考えさせる映画なのだ。

 出演している俳優が素晴らしい。一家の大黒柱である女性医師ニックを演じているのはアネット・ベニング。物語の途中で彼女はドラマの中心から周囲に押し出されていくのだが、最後にさっと全体をまとめ上げる貫禄十分なところなどはさすが。パートナーのジュールスを演じたジュリアン・ムーアは、女性の繊細さと図太さを巧みに表現して、この映画の中で最大のトラブルメーカーでありながら、憎めないチャーミングな女性キャラクターに仕立てている。精子ドナーのポール役はマーク・ラファロだが、トリックスターのようなこの役に単なる「厄介者」や「招かれざる客」では飽き足らない人間味を与えている。登場人物に女性が多いため、こうした役は得てして男性のカリカチュアになりそうなポジションだが、そうならなかったのは脚本の内容以上にラファロが役を掘り下げているからだと思う。子供たちを演じたミア・ワシコウスカとジョシュ・ハッチャーソンは、これだけ芸達者な大人たちに囲まれては見せ場がない。

 リサ・チョロデンコ監督はデビュー作の『ハイ・アート』と2作目『しあわせの法則』を観ているが、今回の映画が一番面白かった。正直以前の2作は僕にはまるでピンと来なかったのだが、今回は見事にツボにはまった。エピソードが少しずつ寸詰まりになっているような、ギクシャクと転がっていく不思議なテンポの良さがある。素直にすたすた歩いているわけではなく、スキップしながら歩いているようなノリ。一歩間違うと転倒しそうなのだが、その寸前で素早く物語全体を切り上げているのがいい。僕はポールのその後が気になったりもするが、そこを切り捨ててしまうことで、話の中心を家族の側に収斂させていくのは強引だがなかなかの手並みだ。

(原題:The Kids Are All Right)

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4月29日公開予定 渋谷シネクイント、TOHOシネマズ シャンテ、シネ・リーブル池袋ほか全国ロードショー
配給:ショウゲート
2010年|1時間47分|アメリカ|カラー|ビスタ|ドルビーSRD
関連ホームページ:http://allright-movie.com/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:キッズ・オールライト
サントラCD:Kids Are All Right
シナリオ:The Kids Are All Right: The Shooting Script
関連DVD:リサ・チョロデンコ監督
関連DVD:アネット・ベニング
関連DVD:ジュリアン・ムーア
関連DVD:マーク・ラファロ
関連DVD:ミア・ワシコウスカ
関連DVD:ジョシュ・ハッチャーソン
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