毎日かあさん

2010/11/29 松竹試写室
西原理恵子の同名人気コミックを豪華キャストで実写映画化。
主演は小泉今日子と永瀬正敏。by K. Hattori

Maikaa  2002年から毎日新聞に週1連載されている西原理恵子の身辺エッセイマンガ「毎日かあさん」を、豪華キャストで実写映画化した作品。原作は2004年に文化庁メディア芸術祭賞を受賞し、翌年には手塚治虫文化賞を受賞するなど、既にとても評価が高い。2009年からはテレビアニメ版も放送され、こちらも好評な様子。そんな中での実写映画化だが、今回の映画は主人公の西原理恵子を小泉今日子が演じ、その夫(元夫)の鴨志田穣を永瀬正敏が演じているのがちょっとした事件。ふたりは1995年に結婚して2004年に離婚。その後『さくらん』での共演などはあったものの、今回の映画ではふたりが主役で、しかも夫婦役なのだから、彼らと同世代のファンはこれだけでドキドキしてしまうのだ。

 物語は売れっ子マンガ家の西原理恵子が、アル中でろくに働かない夫の鴨志田穣と別れ、鴨志田のアルコール依存症克服を機に再同居、鴨志田のがんによる死までを描く。このあたりの事情は彼の小説を映画化した『酔いが覚めたら、うちに帰ろう。』(東陽一監督)でも描かれているので、2本の映画を観比べてみるのも面白いかもしれない。僕は『酔いが覚めたら〜』は未見なのだが、今回の映画を観てぜひそちらも観てみたいと思った。こういう形で同じ物語が異なったバージョンとして競作されることは、映画の世界でも珍しいのではないだろうか。

 『毎日かあさん』の話に戻すが、僕は今回のこの映画が作品として成功しているとは思えなかった。配偶者の死という重い題材を扱いながら、そこに笑いを交えて描いていくことができたとは思えない。シリアスドラマに向かうのか、コメディに向かうのか、その立場が曖昧でどっちつかずなまま映画は否応なしに「死」と対峙して、そのモチーフの重みに押しつぶされているように思う。小泉今日子と永瀬正敏は熱演しているし、子役たちも上手い。だがそれ以外の脇役たちに名も顔も知れた中堅どころの俳優を集めた結果、ドラマが主人公たちの家族に集約しきれず分散してしまうという弱点もある。物語の中にそれなりの役者が出ていれば、観ている方はそこから何かしらのエピソードが派生してくることを期待する。これは映画を長年観ていれば、習性として無意識の内に刷り込まれてしまっているごく自然な思考だ。永瀬正敏はともかく、小泉今日子は「女優」としての技能で周囲の中堅どころに負けてしまうので、ちょっとしたシーンでも主役が脇役たちの中に埋没してしまうのがもったいない。

 少しばかり主演のふたりを弁護しておくなら、この映画は物語のほとんどで子役との共演。どれほど人気と実力を兼ね備えたスター俳優でも、「子役と動物には勝てない」と言って共演を嫌がるという話を聞いたことがある。そういう意味で、この映画の小泉今日子と永瀬正敏はちょっと気の毒だったかもしれない。しかもご丁寧に、犬まで出てくる始末だしなぁ……。

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2011年2月5日公開予定 シネスイッチ銀座ほか
配給:松竹 宣伝:樂舎 WEB宣伝:デジタルプラス
2011年|1時間54分|日本|カラー|ヴィスタサイズ|ドルビーSR
関連ホームページ:http://www.kaasan-movie.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:毎日かあさん
原作:毎日かあさん(西原理恵子)
関連DVD:小林聖太郎監督
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