ランナウェイズ

2010/11/01 ショウゲート試写室
世界初のガールズバンド、ランナウェイズはこうして生まれた。
映画としてのまとまりが悪いのが残念。by K. Hattori

Runaways  1970年代半ばのアメリカ。ロックは若者の音楽としてすっかり市民権を得ていたが、演奏するのは男ばかりだった。高校生のジョーンはギターを習おうと近所の教室の門を叩くが、講師は「女の子にはエレキなんて教えられない」と門前払い。やむなく独学でギターを演奏しだした彼女は、音楽プロデューサーのキム・フォーリーに自らを売り込み、自分と同世代でドラムを叩いているサンディを紹介される。「女ばかりのバンドを作れば売れる!」と直感したフォーリーは、他にも数人のメンバーを集めてきて早速練習開始。だがこのバンドには目玉となるものが欠けている。そこで地元のクラブでスカウトしてきたのが、音楽はまったく素人だがルックスではずば抜けた存在感を持つ15歳のシェリーだった。かくして1975年にランナウェイズは結成される。メジャーレーベルとの契約も決まり、ランナウェイズはワールドツアーに出発。中でも彼女たちを熱狂的に受け入れたのは日本だった。しかしこうした成功が、メンバー間の亀裂を深めて行く。酒とドラッグとセックスにまみれた荒れた生活。メンバー同士の諍い。結成からわずか2年で、バンドは空中分解してしまう……。

 実在したバンドの結成から解散までを、時系列に再現して行く実録音楽映画。主人公のジョーン・ジェットをクリステン・スチュワートが演じ、ボーカルのシェリー・カーリーをダコタ・ファニングが演じている。ランナウェイズは日本でもとても人気があり、映画でも取り上げられている「チェリー・ボム」は大ヒットしたそうだが、僕はほとんど記憶がない。彼女たちが来日して大旋風を巻き起こした頃、僕はまだ10歳かそこらでもっぱら歌謡曲を聴いていたのだ。この年齢で2〜3年の違いは大きい。もっともランナウェイズはアメリカではあまり売れなかったそうだし、この映画も当時のファンに向けて「こんなバンドがいたよね」というノスタルジーをかき立てるために作られているわけではないだろう。映画はひとつの「青春ドラマ」として、夢を持って音楽業界に飛び込んだ少女たちが翻弄されて行く様子を描いている。

 ただしこの映画はまとまりが悪く、青春ドラマとしての面白味に乏しい。モデルになった人物たちが今もほとんど存命で、この映画にも監修協力していることで制約があるのかもしれないが、ジョーンやシェリーのキャラクターが掘り下げ不足に思える。状況としては「いろいろな事がありました」というエピソードの連鎖だが、その下にある心の葛藤のドラマが見えてこない。同じバンドに属しながら、一方は音楽業界に残って成功し、一方はリタイアしてしまったジョーンとシェリーの違いはどこにあったのか? それが。彼女たちの人生にとって、ランナウェイズで活動した短い時間はどんな意味を持っていたのか? ひょっとするとそれは主人公たちの心の中ですら、いまだ整理されていない問題なのかもしれないけれど……。

(原題:The Runaways)

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2011年3月公開予定 シネクイントほか
配給:クロックワークス 宣伝:アルシネテラン
2010年|1時間47分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:ランナウェイズ
サントラCD:Runaways
関連DVD:Edgeplay: Film About the Runaways
関連DVD:フローリア・シジスモンティ監督
関連DVD:クリステン・スチュワート
関連DVD:ダコタ・ファニング
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