クリスマス・ストーリー

2010/09/14 京橋テアトル試写室
クリスマス休暇に実家に集まる家族の確執と思いがけない和解。
アルノー・デプレシャン監督作品。by K. Hattori

Uncontedenoel  フランス北部の町ルーベに暮らすヴィヤール家の人々。いまも仲むつまじいアベルとジュノンのヴィヤール夫妻には子供が4人いたが、最初に生まれた長男ジョセフは白血病で6歳で死亡。だが優等生の長女エリザベート、問題児だった次男アンリ、引っ込み思案だった三男イヴァンは無事成長して今はそれぞれ独立している。エリザベートとアンリは子供の頃から仲が悪かったが、5年前からはアンリの借金トラブルなどが原因で絶縁状態になっている。だが母親のジュノンが死んだジョセフと同じ血液の病気になっていることが発覚した時、父アベルは家族全員で共にクリスマスを祝おうと呼びかける。だが家族が揃えば、懐かしい甘い思い出と共に、過去の忌まわしい記憶や後味の悪い思いも蘇ってくるのだった。

 アルノー・デプレシャン監督の新作は、豪華キャストが共演するホームドラマ。舞台になっているルーベの町は、監督の故郷でもある。監督自身はこの映画を「フランス版の感謝祭映画」というコンセプトで作ったのだという。感謝祭映画というのは、例えば『エイプリルの七面鳥』のようなもの。バラバラになりかけている家族が感謝祭の食卓を囲み、そこでいろいろとトラブルが起きるものの、最後は和解して再びそれぞれの生活に戻っていく。これは家族の再生を描くのが目的だから、家族全員を集めるきっかけは感謝祭でなくてもいい。ジョナサン・デミの『レイチェルの結婚』では、結婚式がそのための装置になっていた。葬式、授賞式、卒業式、誕生パーティー、そしてクリスマスなど、とにかく普段は離ればなれになっている人たちを無理矢理同じ場所に集めれば、そこに何かしらのドラマが生まれる。

 この映画で中心にあるのは長女エリザベートと次男アンリの葛藤だが、それ以外にもさまざまなエピソードが散りばめられていて、全編が巨大なモザイクのように構成されている。母ジュノンとアンリの確執。従兄弟シモンの秘めた思い。アンリの死んだ妻と、新しい恋人の話。一時的に精神病院に入院していたエリザベートの息子ポールの話。手術を前に不安を感じる母ジュノンの気持ち。さまざまな事柄が次から次に起きて、この一家が和解するのか、それとも完全に崩壊してしまうのかが最後までわからないスリルがある。

 登場人物が多すぎて名前と顔がなかなか一致しないのに困った。欧米の推理小説みたいなもので、会話の中に「誰それが昔こうした」という話が出てきても、その「誰それ」が誰だったかがとっさにわからない。少し考え込んでは思い出すのだが、この考えている時間が映画を観るスピード感を損なってしまう。フランス人にとってはアベルやジュノンといった名前は風変わりなものだそうで、これらを手がかりに全体を理解していけばいいのだろうけれど……。

 個々のシーンには忘れがたいものがたくさんある。一番驚いたのはアンリが道を歩きながらバッタリ倒れるシーンだ。

(原題:Un conte de Noel)

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11月20日公開予定 恵比寿ガーデンシネマ
配給・宣伝:ムヴィオラ
2008年|2時間30分|フランス|カラー|シネマスコープ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://a-christmas-story.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:クリスマス・ストーリー
サントラCD:Un Conte De Noel
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