愛媛県の四国中央市にある愛媛県立三島高校書道部の生徒たちが、町のために少しでも何かしたいと考えてスーパーやショッピングモールで始めた書道パフォーマンス。それは畳何十畳にもなるような巨大な紙の上を音楽に合わせて走り回りながら、数人が一致協力して一枚の「書」を作り上げていくものだ。やがて生徒たちは自分たちの手で「書道パフォーマンス甲子園」を企画することになる……。この様子が民放ネットのテレビ番組で地方発の話題として紹介されると反響は大きく、今ではテレビ局主催で「書道ガールズ甲子園」と題した大会が開かれるに至った。そんな実話を元に作られたのが、本作『書道ガールズ!! わたしたちの甲子園』だ。
これはそもそも映画のタイトルや「実話の映画化」という企画の成り立ちからして『ウォーターボーイズ』や『フラガール』のパクリみたいなものだが(実話ではないが『スウィングガールズ』というヒット作もある)、こればかりは「書道ガールズ甲子園」というものが既に行われている上での映画だから仕方がない。先行したイベントの名前がそもそもパクリなのだ。(ちなみに「書道ガールズ甲子園」の参加資格は女子部員のみだが、映画のモデルになった「書道パフォーマンス甲子園」は高校生の書道部員なら性別に関係なく参加資格がある。映画の中にもちゃんと男子部員が登場する。テレビ局が「女子生徒」しか求めないのは、その方が「絵になる」と考えてのことだろうけど、なんだかなぁ……。)
パクっているのはタイトルだけではない。メンバーはそれぞれ個性的で優秀だがチームとしてのまとまりのない書道部に、臨時雇いでクセのあるコーチがやってきてチームが一丸になるという筋立ては、『がんばれ!ベアーズ』や『飛べないアヒル』などのスポーツ映画に定番の設定だが、本作はむしろその設定を借りた『フラガール』に近い。寂れた町の町おこしにヒロインたちが頑張るとか、はじめは主人公の行動に反対していた主人公の親が最後は協力するというのも『フラガール』のまま。要するにこの映画は、書道パフォーマンスという部分を除けば映画的な新しさがほとんどないのだ。
2時間という長さは標準的な映画にしてはやや長いが、その長い脚本をうまくまとめ切れていないのも気になる。映画前半に主人公と関わってくる人物が映画中盤で退場し、後半では前半まったく登場しなかった人物が新たに登場して別の話が始まる二階建ての構成を、わざわざ用いる必要があったのだろうか。後半で出てくる話は前半に前倒しして伏線を張っておくこともできたはずだし、前半に出てくる人物を退場させるタイミングをもっと後半にズラしてクライマックスへの助走に用いることだってできたはず。初登場のシーンこそ印象的だった若いコーチが、その後ほとんど活躍していないのも気になる。素材は面白いのに、映画としては残念なところが多い。