17歳の肖像

2010/03/05 SPE試写室
フランス文化と大人の世界に憧れる少女の成長ドラマ。
主演のキャリー・マリガンが好演。by K. Hattori

An Education  1961年。ロンドン郊外に両親と暮らすジェニーは、名門オクスフォード大学への受験対策に余念がない。だが非の打ち所がない優等生の彼女は、そんな日常にちょっと退屈してもいる。女の子同士の他愛のないおしゃべり。ちょっと頼りないボーイフレンド。彼女の気を紛らわせるのは、時折ふかすタバコと、ジュリエット・グレコのレコードぐらい。だがそんな彼女の前に、デイヴィッドという男性が現れる。美術品と不動産の商売をしているという彼は金持ちで、芸術や文化への造詣も深い教養溢れる人物。ジェニーはそれまで知ることのない世界を案内してくれる彼に、すっかり魅了されてしまう。デイヴィッドもすっかり彼女に惚れ込み、やがて結婚を申し込むのだが……。

 原作はイギリスの女性ジャーナリスト、リン・バーバーの自叙伝だが、映画ではあえてそれを「原作」とは表記していないし、ヒロインの名前も変えてある。原作未読なので(邦訳が出ていないし)映画がどの程度バーバーの自叙伝を下敷きにしているのかは不明だが、映画を観る限りにおいてはかなり変えていると思う。人物の出し入れやエピソードの配置に無駄がない、じつによく書けた脚本なのだ。脚本を書いているのは『ハイ・フィデリティ』や『アバウト・ア・ボーイ』のニック・ホーンビィで、本作の脚本は米アカデミー賞をはじめ数々の映画賞に軒並みノミネートされるという高評価ぶりだ。監督は『幸せになるためのイタリア語講座』のデンマーク人監督ロネ・シェルフィグ。

 物語の舞台になっている1961年というのは、若者文化が大きく台頭してくるほんの少し前の時代。ビートルズのレコードデビューは翌年の1962年。やがてロンドンは「スウィンギング・ロンドン」という若者文化の中心地になっていくのだが、この時代はいわばその前夜だ。この時代のイギリス若者文化としてはロッカーズやモッズというものがあるのだが(ビートルズなどもそこから出てくる)、映画の中では10代の少女が「大人の世界」に憧れるという状況設定になっているので、こうした若者文化は興味関心の外側にある様子。むしろヒロインが憧れるのは、フランスの文化だ。グレコの歌声やサルトルの実存主義。少し背伸びをして、大人びた世界を垣間見てみたいと願う。そんな「大人の世界」の象徴が、フランスでありパリなのだ。だがそのパリの景色は、彼女の中でやがて色褪せたものに変わってしまうのだが……。

 主演のキャリー・マリガンは少女から大人の女へと変化してゆくヒロインを好演しているが、なんでも彼女を「21世紀のオードリー・ヘップバーン」と呼ぶ人たちがいるとか。そういえばオードリー演じるインテリの女の子が、パリの最新哲学に憧れるというミュージカル映画がありました。1957年の『パリの恋人』。これもヒロインがパリに幻滅して、手近な男とくっついて幸せになる話だった。

(原題:An Education)

4月17日公開予定 TOHOシネマズ シャンテ
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2008年|1時間40分|イギリス|カラー|スコープサイズ|ドルビーデジタル、ドルビーSR
関連ホームページ:http://www.17-sai.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:17歳の肖像
DVD (Amazon.com):An Education
サントラCD:17歳の肖像
サントラCD:An Education
シナリオ:An Education
原作洋書:An Education (Lynn Barber)
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