てぃだかんかん

海とサンゴと小さな奇跡

2010/02/08 ショウゲート試写室
沖縄の珊瑚礁保護のためサンゴの養殖と移植を行う男の実話。
脚本の構成とキャスティングに問題が多い。by K. Hattori

Teidakankan  沖縄で養殖サンゴの移植による珊瑚礁の保全・再生に取り組み、2007年度の「人間力大賞」(日本青年会議所、NPO法人人間力開発協会)を受賞した金城浩二さんの実話を映画化。主演はナインティナインの岡村隆史で、妻を演じるのは松雪泰子。主人公は「子供たちに昔の美しい沖縄の海を見せたい」という動機でサンゴの養殖と移植を始めるが、周囲の理解や協力が得られず経済的に困窮するが、世界で初めて移植サンゴの産卵に成功したことから苦労が報われるというお話。

 この映画には2つの大きな問題がある。ひとつは映画から「沖縄のニオイ」がしないこと。出演しているのがほとんど本土の人間だということもあるのだろうが、沖縄で生活をしている人たちの生々しい生活臭が感じられない。生活臭が感じられないところで、経済的な困窮という生活苦を演じられても、そこからは苦労が伝わってこないのだ。これはキャスティングの問題でもあるが、それだけではないと思う。ハリウッド映画はハリウッドのスタッフとキャストを引きつれて世界中どこにでも出かけ、ちゃんと現地のニオイがする映画を撮っている。沖縄を舞台にした映画はこれまでにもたくさん作られているが、どの映画もこの作品よりは現地の生活を感じさせる描写があったはずだ。ならばこの映画だって、このキャスティングのままちゃんと沖縄のニオイがする映画を作れるはずなのだ。これは準備段階で取材不足なのではないだろうか。脚本家やプロデューサーや監督は、映画を撮る前にちゃんと沖縄で取材してみたのだろうか。

 もうひとつの問題は、脚本の構成だ。シド・フィールドの映画4等分理論に従うなら、主人公の苦労話は第2幕の後半だけでいい。映画前半ではむしろ、苦労など感じさせない楽しさや喜びを味わせてほしいのだ。第1幕では主人公がサンゴ養殖に一応成功するまでを描く。第2幕に入ると、移植作業を手伝う人々の輪がどんどん広がっていく。ダイバー仲間の協力、漁協の協力、マスコミの取材、大口のスポンサーも現れ、役所も後押しを始める。映画のミッドポイントは学会での発表だ。ところが主人公は学者たちから嘲笑される。とんだ期待はずれ。これをきっかけに、すべてが悪い方向に転がり出す。マスコミから袋だたきにあう、役所が手を引く、あてにしていた大口スポンサーは消える、協力的だった漁協も冷淡になる、主人公には莫大な借金だけが残る。家庭は困窮して、食事さえ満足に食べられなくなる。そこに開発業者からの悪魔の囁き。開発業者は映画の序盤にも登場して、その時は主人公が誘いを一蹴しているという形にするともっといいだろう。この話は脚本の構成次第で、これよりもっと面白くなったはずなのだ。

 これは実話なので、映画を観て「こういう人もいるのだなぁ」ということがわかればそれでいいという考え方もあり得る。それはそれで映画のひとつの役目ではあるのだ。

4月24日公開予定 新宿バルト9ほか全国ロードショー
配給:ショウゲート 宣伝協力:スキップ WEB宣伝:アンリミテッド
2010年|1時間59分|日本|カラー|スコープサイズ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://tida.goo.ne.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:てぃだかんかん 海とサンゴと小さな奇跡
主題歌CD:希望という名の光(山下達郎)
原作:てぃだかんかん-海とサンゴと小さな奇跡-(金城浩二)
ノベライズ:小説てぃだかんかん (小学館文庫)
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