椿姫

2009/11/18 アキバシアター
ヴェルディの代表作を劇場のスクリーンで楽しむ。
臨場感はなかなかのものだ。by K. Hattori

ヴェルディ:椿姫(日本語字幕付き) [Blu-ray]  劇中歌「乾杯の歌」がCMなどにも使われるほど有名なヴェルディのオペラ「椿姫」を、ハイビジョン撮影して劇場スクリーンで鑑賞するというもの。同じ舞台は既にDVDなどでもパッケージ販売されているようなのだが、それをあえてスクリーン鑑賞させるという企画は、ODS(Other Digital Stuff/映画以外のデジタルコンテンツ)が劇場に浸透していくひとつの過程でもあるのだろう。映画創生期には舞台でヒットしている作品の一部を抜粋して撮影したり、人気の舞台芸人などをカメラの前に立たせて芸を披露させるようなものが数多く作られているが、オペラや歌舞伎や演劇やミュージカルの舞台をそのまま撮影してスクリーンに映写するという企画は、映画史的には先祖返りであり、別の言い方をすれば「映像の原点に戻る」ということにもなるのだろう。

 今回の『椿姫』はミラノのスカラ座で上演された舞台をハイビジョン収録したもの。指揮はロリン・マゼール。演出はリリアーナ・カヴァーニ。出演はアンジェラ・ゲオルギュー、ラモン・バルガスといった顔ぶれ。映像は序曲の演奏から終幕のカーテンコールまでを収録していて、カメラは細かくカットを割らずに基本は舞台全体のフルショット。客席のざわめきや拍手、歓声なども収録されていて、まるで劇場で実際にオペラを観ているような臨場感だ。基本は舞台全景のフルショットだが、時々カメラが舞台上の歌手に寄ったり、移動カメラが歌手たちの横をすり抜けていったりする。こうしたカットは実際の上演中には撮影できないだろうから、おそらくこの作品中では実際の上演舞台の映像と、リハーサルなどの映像が織り交ぜられているのだろう。これによって観客が劇中に吸い込まれていくような効果が生まれて、これはこれでなかなか面白いものだと思う。あまりカメラが舞台の中をウロウロするのもうっとうしいのだが、この作品に関してはそのあたりがかなり絶妙だ。

 原作はアレクサンドル・デュマ・フィスの小説で、サイレント映画の時代から何度も映画化されている。もちろんオペラとしてではなく、通常のドラマ作品としてだ。有名なのは1937年にジョージ・キューカーがグレタ・ガルボとロバート・テイラー主演で映画化したもので、現在は500円DVDで簡単に手に入れることができる古典。オペラ版は1982年にフランコ・ゼフィレリが映画化していて、この時の主演はテレサ・ストラータスとプラシド・ドミンゴ。日本ではヴェルディのオペラ版をモチーフに『椿姫』という映画が松坂慶子と加藤健一主演で撮られたこともあるが、それよりも「椿姫」を下敷きにした有名映画は1970年のハリウッド映画『ある愛の詩』かもしれない。身分違いの男女の恋。男の父親の反対。一度は女性の側が身を引こうとする。女性が不治の病にかかり、息子が結婚を許されたときには既に最後を迎えてしまうのだ。

(原題:La Traviata)

1月16日公開予定 新宿バルト9ほか全国順次ロードショー
配給:ソニー株式会社 宣伝:る・ひまわり
2007年|2時間13分|イタリア|カラー
関連ホームページ:http://www.livespire.jp/opera/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:椿姫
関連DVD:椿姫(ヴェルディ)
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