売れっ子コミック作家のソフィーは、ハンサムな医者との結婚を間近に控えた幸福の絶頂から、突然奈落の底へ突き落とされた。婚約者のジェフが人気女優ジョアンナと恋仲になり、彼女との婚約を一方的に解消してしまったのだ。失恋の痛みに耐えかねるソフィーは復讐を誓う。何が何でも彼の気持ちを取り戻した上で、今度はこっちからこっぴどく振ってやるのだ! ジョアンナの元恋人ゴードンという強い味方を得て、ソフィーは復讐の準備を着々と進めていくのだが……。
チャン・ツィイー主演のコメディ映画。監督はアメリカの大学で映画を学んだエヴァ・ジンで、これが長編第2作目。脚本も彼女自身が書いている。映画のジャンルとしては、コメディの中でも「スクリューボール・コメディ」と言われるもの。気の強いヒロインと彼女に翻弄される男が、さまざまな事件を起こしながら最後は結ばれるというのがパターンで、1930年代から40年代のハリウッドで大流行した。これが後により洗練されたラブコメやロマコメへと発展していくわけだが、スクリューボール・コメディのスピード感を愛する人はいつの時代にもいて、今でも時々その遺伝子を多分に含んだ作品が作られたりしている。本作『ソフィーの復讐』は1990年代にメグ・ライアン主演で製作された『フレンチ・キス』や『恋におぼれて』を直接参考にしたようだが、これらももちろんスクリューボール・コメディの系統にある作品だった。ちなみにこの2作からは「ヒロインが自分から去った元恋人を取り戻そうとする/元恋人に復讐しようとする」というアイデアをそのまま拝借している。
この映画はハリウッドでも活躍する国際女優チャン・ツィイーがプロデューサーも兼ねているのだが、出演者たちの顔ぶれも国際的だ。ヒロインの婚約者ジェフを演じているのは韓国の俳優ソ・ジソブ。カメラマンのゴードンを演じるピーター・ホーと、ヒロインの友人ルーシー役のルビー・リンは台湾で活躍している俳優たちで、もちろん中国からもジョアンナ役のファン・ビンビンや友人リリー役のヤオ・チェンが出演しているという次第。こうした出演者たちの出身や国籍を考慮しながら映画を観ると、物語の中では中国ががんばり、台湾が中国を忠実に支え、韓国は優柔不断であてにならない……という位置関係にあることがわかって政治的なニオイが感じられたりもするわけだが、これはうがった見方過ぎるような気もする。
それにしても中国はお金持ちになった。こうした映画が中国人一般の生活実態をそのまま反映しているとは決して思わないのだが(「花より男子」が日本人一般の生活実態を反映していないのと同じだ)、こうした映画を中国の一般大衆が受け入れていることが、中国社会の大きな変化を表しているように思う。そもそもこの映画には「労働者」がひとりも出てこないではないか。時代の変化を感じるなぁ。
(原題:非常完美 Sophie's Revenge)
DVD:ソフィーの復讐
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