「エデンの東」のソン・スンホンが硬派な高校生を演じたラブ・コメディ。2004年に作られた映画で、原作も日本語訳が出ているというのに、なぜか映画は日本公開されていなかった幻の作品だ。今回は10月の日本版DVD発売を前に、ようやくの劇場公開が実現した。1976年生まれのソン・スンホンはこの映画が撮影されているとき20歳代後半だったはずだし、ヒロイン役のチョン・ダビンも20代半ばに差し掛かっていたはず。じつは映画の中で先輩を演じていた俳優の方が、ソン・スンホンやチョン・ダビンより若かったりするのだ。しかしこれをちゃんと高校の先輩後輩に見せてしまうのが映画のマジック。これはキャスティングの妙味であると同時に、キャラクターの性格付けが上手く行っているからだろう。しかし性格付けのスパイスを強く効かせた結果、若年組の幼さに比べて先輩たちが途方もなく大人びた正確に描かれていたりする。こういうキャラクター設定って、大昔の少女マンガみたいだなぁ……。
劇的な男女の出会いからドタバタの末にふたりが結ばれ、その後波乱があったものの最後はよりを戻してハッピーエンドという物語の流れは定番のもの。しかしこの映画はエピソードの配置がどうも奇妙で、物語が必要以上にドラマチックに成りすぎているように見える。素直に語れば1時間半で終わる話を、無理矢理2時間に引き延ばすため後半のエピソードを強引に引っかき回しているように見えるのだ。ひょっとするとそういう原作なのかもしれないが、映画の場合「原作通りだから」は言い訳にならない。映画の時間配分に併せてエピソードを加減し、2時間なら2時間の中にドラマの紆余曲折をピッタリと納めなければならないのだ。この映画はそれがどうも上手く行っていない。紆余曲折の間に隙間があったり詰め込みすぎの部分があったりして、どうにもこうにもバランスが悪い。
出会った男女が誤解やケンカといったドタバタの末に結ばれるという物語の場合、ふたりが結ばれた時点で物語は終わりだ。ところがこの映画は主人公たちが結ばれてハッピーになった後、あれこれあってまた別れ、再度結ばれるという構成になっている。話としては主人公たちが結ばれた時点で一度終わっているのに、その後にまだ話が続いていくのだ。言うなればこれは、恋愛映画の正編と続編を無理矢理1本の映画にまとめたようなもの。『ブリジット・ジョーンズの日記』とその続編を、強引に1本の映画に編集したらきっと同じような印象の映画になるだろう。
主人公と先輩の確執の話や、主人公と父親についてのエピソードなどが、物語の後半になっていきなり出てくるという構成に難があるように思える。これらのエピソードの「真相」が物語の後半で明かされるとしても、それ以前からこれらの話題を伏線として出しておけば、それが前半と後半を結ぶ強力なエピソードになっただろうに。
(英題:The Guy Was Cool)
DVD:あいつはカッコよかった
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