私の中のあなた

2009/07/30 GAGA試写室
ジョディ・ピコーの小説をニック・カサヴェテスが映画化。
病気で死に向かう娘と家族の物語。by K. Hattori

My Sister's Keeper [Original Motion Picture Score]  「savior sibling」という耳慣れない言葉がある。これは白血病など治療困難な難病を抱えた兄姉を救うため、意図的に生み出された弟妹のことだ。骨髄移植では白血球の型であるHLAが一致することが必要だが、赤血球の型がABO型の組み合わせで4種類しかないのに対し、HLAの組み合わせは数万種類。これは親子間ではまず一致せず、兄弟姉妹の間でも適合率は25%程度。骨髄バンクなどを通して赤の他人から移植を受けようとすれば、一致する確率は数万分の1から数百万分の1と言われている。そこでHLAが一致する確率が高い患者の弟妹を新たに生んで、そこから骨髄などを移植しようという発想が生まれる。着床前診断によってHLAは事前に調べられるから、体外受精で複数の受精卵を作れば、そこから目的に合致した受精卵だけを選別することは可能だ。こうして生まれた子供は、誕生したその瞬間から自分の兄や姉のために血液や骨髄や臓器を提供する役目を背負わされているのだ。

 本作『私の中のあなた』の主人公アナは、3つ違いの姉ケイト専用のドナーとして生まれた11歳の少女だ。彼女は生まれてこのかた、血液や骨髄なを姉の治療のために提供してきた。それによって姉の症状が回復したこともあるが、その都度病気は再発して、現在ケイトは腎不全と透析による合併症で苦しんでいる。アナが次に提供を求められるのは、おそらく腎臓だろう。だが彼女は弁護士を雇って両親を訴える。姉のことは大好きだし健康になって欲しいとも思っているが、そのために自分の身体をこれ以上切り刻んでほしくない! これはケイトを中心に成立していた家族に向けて投げつけられた、大きな爆弾だった……。

 物語は「次女が母親を訴える」という特殊な状況が物語の推進力になるが、映画は法廷での親子闘争が中心になるわけではなく、あくまでも家族の物語として進行していく。訴訟問題は家族が抱えている深刻な危機をあぶり出していく「試練」として働き、訴訟の勝ち負けやどちらの言い分に正当性があるかなどを問うものではない。この映画の中で問われているのは「私は何のために生まれ、何のために今ここに存在しているのか?」という人間にとって根源的な問題だ。人は誰でも、「自分とは誰か?」「自分は何のために生きているのか?」と自らに問いかける瞬間がある。しかしこの映画に登場するフィッツジェラルド家は、目の前に「死」を目前にした家族を持つことで、この問題を常に考えざるを得ない状況に追い込まれている。

 出演する俳優は実力者ぞろい。キャメロン・ディアスの他、『リトル・ミス・サンシャイン』のアビゲイル・ブレスリン、ジェイソン・パトリック、アレック・ボールドウィン、ジョーン・キューザック。娘を交通事故で失ったという女性判事を演じているジョーン・キューザックがとてもよかった。台詞は少ないのだが、表情と存在感で映画全体を引き締めている。

(原題:My Sister's Keeper)

10月9日公開予定 TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー
配給:ギャガ・コミュニケーションズ Powerd by ヒューマックスシネマ
2009年|1時間50分|アメリカ|カラー|シネスコ|ドルビーSR、ドルビーデジタル、SDDS
関連ホームページ:http://watashino.gyao.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:私の中のあなた
サントラCD:私の中のあなた
サントラCD:My Sister's Keeper
サントラCD:My Sister's Keeper [Score]
原作:わたしのなかのあなた(ジョディ・ピコー)
原作洋書:My Sister's Keeper (Jodi Picoult)
関連DVD:ニック・カサヴェテス監督
関連DVD:キャメロン・ディアス
関連DVD:アビゲイル・ブレスリン
関連DVD:アレック・ボールドウィン
関連DVD:ジェイソン・パトリック
関連DVD:ソフィア・ヴァジリーヴァ
関連DVD:トーマス・デッカー
関連DVD:ヘザー・ウォールクィスト
関連DVD:ジョーン・キューザック
関連DVD:エヴァン・エリングソン
関連DVD:デヴィッド・ソーントン
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