宇宙(そら)へ。

2009/07/17 SPE試写室
半世紀にわたるアメリカ宇宙開発史のドキュメント。
シャトル事故のシーンはやはり胸が痛む。by K. Hattori

宇宙へ。  ソ連が世界初の人工衛星スプートニク1号を打ち上げたのは、1957年10月のことだ。アメリカはこれに対抗して翌年1月には人工衛星エクスプローラー1号の打ち上げに成功。同年10月には既存の国家航空諮問委員会(NACA)を母体に陸海空軍の宇宙開発部門を統合させ、アメリカ航空宇宙局(NASA)を設立するに至る。以後、アメリカの宇宙開発はNASA中心に行われるようになり、マーキュリー、ジェミニ、アポロなどの有人宇宙ロケット計画が次々に押し進められていった。当初は米ソ両国が互いの威信をかけて抜きつ抜かれつのデッドヒートを繰り広げた宇宙開発レースだったが、1960年代のアポロ計画でアメリカが人間を月に送ったのに対し、ソ連はロケット開発の失敗などもあって有人月探査計画を中止。かくしてアメリカは宇宙開発における特権的な地位を独占し、冷戦崩壊後の現在も宇宙開発におけるリーダーシップを握り続けている。本作は半世紀に及ぶアメリカ宇宙開発の歴史を、NASAに保管されていた秘蔵映像をもとに構成したドキュメンタリー映画だ。

 NASAの映像資料をもとにしたドキュメンタリー映画としては、本作に先行する形で『ザ・ムーン』(2007)という作品が作られている。ただし『ザ・ムーン』はアポロ計画のみを大きくクローズアップしていたのに対し、本作『宇宙(そら)へ。』はマーキュリー計画からスペースシャトルまで、NASAの歴史全体を描いているという違いがある。映画『ライトスタッフ』でマーキュリー計画に挑む宇宙飛行士たちの姿に感動した者としては、『ザ・ムーン』で割愛されてしまった初期宇宙飛行士たちの活躍が本作で復活しているのは嬉しい。また観ていて感心したのはマーキュリー計画やジェミニ計画を、有人月探査のために必要な技術を確立するための準備計画として位置づけていること。アポロ計画はそれ単独で成立しているのではなく、人間を月に送り出して帰還させるという壮大な計画の一部だったのだ。

 そんな映画だからもちろんクライマックスはアポロ計画なのだが、NASAの歴史はアポロで終わらず、その後のスペースシャトルへと引き継がれていく。ここで映画全体のテーマとして浮かび上がってくるのが、「人間はなぜ危険を冒してまで宇宙に向かうのか?」というもの。ここで大きくクローズアップされるのが、1986年1月28日に起きたスペースシャトル・チャレンジャー号の爆発事故だ。この事故では乗員7名全員が死亡。2003年2月1日にはコロンビア号が帰還途中に空中分解し、やはり全乗員7名が死亡している。しかしそれでも、人々は宇宙を目指す。

 NASAはスペースシャトルに替わる次世代の有人宇宙飛行を目指して、オリオンの開発を進めている。初飛行は2015年以降になる予定だが、そこでは月探査に続く壮大な目標として火星への有人探査計画が視野に入っている。

(原題:Rocket men)

8月21日公開予定 TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2009年|1時間38分|イギリス|カラー|ビスタサイズ|ドルビーデジタル、ドルビーSR
関連ホームページ:http://www.we-love-space.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:宇宙へ。
日本版主題歌:宇宙へ~Reach for the sky~(ゴスペラーズ)
関連DVD:リチャード・デイル監督
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