セブンデイズ

2009/05/22 シネマート銀座試写室
子供の命と引き替えに女弁護士が強要された仕事とは……。
誘拐サスペンス+法廷ミステリー。by K. Hattori

 勝率100%という敏腕弁護士ユ・ジヨンは、8歳の娘と母子ふたり暮らし。だが平和な生活は娘の誘拐によって一変する。翌週行われる裁判で、ある事件の被告とされるチャン・チョルチンを無罪にしろというのが犯人の要求だ。この要求を聞き入れなければ、娘の命は奪われてしまう。だがその事件とは、強姦殺人と死体遺棄の罪で被告への死刑判が確実視されているものだった。これをどうひっくり返せというのだ? だがジヨンは友人キム刑事の協力を得ながら、事件の真相を究明しはじめる。死体の傷から導き出される粗暴で発作的で無秩序型の犯人像と、死体からきれいに証拠を拭い去った用意周到で計画的な秩序型の犯人像が示す矛盾。やがてジヨンは、事件の裏側に隠れた黒幕の存在を知る。殺人事件の真犯人は誰だ? そしてジヨンの娘を誘拐した犯人の正体と目的は何なのだ? すべての答えは木曜日、判決が下される日に明らかにされるのだ!

 『シュリ』の北朝鮮工作員役で日本の映画ファンの前にお目見えし、日本映画『RUSH!』に出演したり、日本の化粧品メーカーのCMで藤原紀香と共演していたキム・ユンジン。その後アメリカのテレビドラマ「LOST」に出演して国際的なスターとなった彼女が、久しぶりに韓国に戻って出演したのが本作『セブンデイズ』だ。監督はホラー映画『鬘かつら』が日本で公開されているウォン・シニョンで、今回の映画は間に1作はさんだ3作目だ。

 かなりユニークな発想の映画だ。もっとも風変わりなのは、「被告を無罪にするために弁護士を脅迫する」という点だろう。被告人の罪を軽くするのが弁護人の務めだから、弁護士が被告人の有利になるよう働くのは当然のことではないか。逆なら話はわかる。「被告人を有罪にするよう弁護士を脅迫する」なら話は成立するのだ。でもこの映画はそうなっていない。十中八九死刑が確定と思われている被告人を、何が何でも無罪にしろという。誘拐犯のこうした要求の動機が、映画の最後に明らかにされるシーンはショッキングであると同時に、この映画は命を命で償わせる「死刑」という制度の限界を、じつに鋭く突いているものだとも思わされた。

 日本には死刑制度に賛成という声が多いし、僕自身も死刑制度に積極的に反対するわけではない。しかし昨年6月に起きた秋葉原通り魔殺人事件の現場を訪れたとき、死刑という制度の限界を考えずにはいられなかった。かけがえのない命を奪った者の罪を、命で償わせること自体は自然な発想だと思う。しかし死刑が「被害者の命」と「加害者の命」のバランスの上に成り立つ制度だとしたら、仮にこの事件の犯人が死刑になったとしても、被害者の命はその何分の1の価値しかないという意味になってしまうではないか。そんなことが許されていいのか? たぶんこの映画が突きつけているのは、同じような疑問なのだ。

(英題:Seven Days)

7月11日公開予定 シネマート六本木
配給:エスピーオー 宣伝:マジックアワー
2007年|2時間5分|韓国|カラー|シネマスコープ|SRD、SR
関連ホームページ:http://www.7days-movie.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:セブンデイズ
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