幸せのセラピー

2009/05/20 TCC試写室
アーロン・エッカートとジェシカ・アルバ主演のコメディ映画。
自分の幸せを探すのは楽じゃない。by K. Hattori

Meet Bill  結婚相手が銀行頭取の娘だったことから、ごく自然な成り行きで義父の経営する銀行で働くことになったビル。重役の肩書きを貰ってそれなりに仕事はしているつもりだが、何年たっても彼はこの生活に馴染めない。仕事では上役である義父たちに気を遣い、私生活でも義父や妻の気を遣わねばならない毎日に息が詰まりそうなのだ。妻の家族の世話になっているつもりは毛頭ないのだが、妻の家族の中に入れば彼だけが「ヨソ者」なのは事実。こんな生活から逃れるためには、まず義父から経済的に独立しなければならない。そこでビルが考えたのは、ドーナツ・チェーンのフランチャイジーになること。しかしそのためには、まず妻の同意を得なければならない。ところがビルは、その妻がテレビレポーターの男と浮気していることを知ってしまう。

 単純な物語の中にあれこれれいろんな要素を詰め込んで、いささか混乱している映画だ。妻を愛しているが、妻の家族と一緒に仕事をするのがたまらなく嫌だ、という話ならそれだけで映画を1本作ればいい。妻を愛しているがその不倫を知ってしまい、周囲の人の応援を受けながら妻を取り戻そうと四苦八苦する話なら、それだけでまた1本の映画を作ればいい。高校の後輩のメンター(実社会研修における指導員)を任されたものの、あてがわれた学生は生意気な不良学生で、しかも私生活もドタバタが続いて主人公が振り回されるという話なら、それだけで1本の映画を作ればいい。エリート銀行マンの仕事に嫌気がさしてドーナツ・チェーンのフランチャイジーに応募したものの、妻にそれを言い出せなくて別の女性に妻を演じて貰ったところ、妻がそれを不倫と誤解してややこしいことになる話なら、それだけで映画を1本作ればいい。しかしこの映画にはその全部が詰め込まれている。

 1本の映画の中で複数のエピソードを並行して走らせるのは構わないが、その方向や足並みが揃っていないと印象は取り散らかったものになってしまう。こうした混乱は、そのまま主人公の行動の混乱にもつながって、映画を観ていても戸惑うばかり。もっともこれは最初から「混乱した行動をする主人公」という設定があって、それに合わせて周辺エピソードを付け加えた結果かもしれない。映画を作る過程はわからないが、結果として映画の歯切れが悪くなっているのは事実だ。主演のアーロン・エッカートだけでは商品として弱いと考えたのか、脇役にジェシカ・アルバを持ってきたのもストーリーのバランスを悪くした。このへんはごく軽く、あっさりと流した方が主人公と妻の関係に物語が集中できたはずなのだ。

 しかしながら、僕はこの映画が結構気になる。この主人公のバカな主人公に好感を持ってしまう。そして主人公に同情してしまう。他人に用意された「幸せ」を拒否して、自分なりの生き方を探そうとする姿を応援したくなる。まあ気づくのが遅いと言えば遅いんだけどね。

(原題:Meet Bill)

6月6日公開予定 新宿武蔵野館
配給:アートポート
2007年|1時間37分|アメリカ|カラー|ビスタ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.artport.co.jp/movie/shiawase-serapi/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:幸せのセラピー
DVD (Amazon.com):Meet Bill
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