山形スクリーム

2009/04/24 スペースFS汐留
惨殺された平家の落ち武者の呪いが山形の小村を襲いまくる!
竹中直人監督のホラー・コメディ。by K. Hattori

 竹中直人という「コメディアン」の顔を最初に覚えたのは、1980年代中旬のことだったと思う。「徹子の部屋」では『狼男アメリカン』の変身シーンを再現してみせ、好きな映画は観てくるとすぐにサワリを友人たちの前でマネしてみせるのだが、それを見て映画館に行った友人たちはそのシーンになると「でた、そっくりだ!」と笑うシーンではなくても爆笑するのだと困った顔をしていた。竹中直人は当時から相当のB級映画フリークであり、今でもその手のジャンル映画を中心に相当数のビデオやDVDを収集するコレクターとして有名な人なのだ。ところがそんな竹中直人がこれまで監督してきた映画は、どれもシリアスなドラマ作品ばかりだった。作中には思わず笑いを誘うコミカルなシーンもあるにはあるが、映画としては文芸路線のものばかり。ところが6本目の監督作となるこの『山形スクリーム』は、正真正銘、最初から最後までコテコテのコメディ映画になっている。

 この映画を一言で言い表すなら、「竹中直人版B級映画大全」といったところだろう。源氏との戦いに敗れ非業の死を遂げた平家の武将・葛貫忠経(つづらぬきただつね)と配下の武将たちが甦って人々を襲うというのが物語の中心だが、そこに『ゾンビ』ものの要素や、『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』(もしくはオリジナルの『ミイラ再生』か)、『マーズ・アタック!』などの物語をくっつけて、さらに『ブレードランナー』やら『フランケンシュタインの花嫁』やら『SF/ボディスナッチャー』といった映画の要素をまぶし、その上で竹中直人流のギャグをてんこ盛りにしつつ、あっと驚くような豪華キャストを散りばめた映画なのだ。これまで貯め込んでいた竹中監督のB級趣味が、ここに来て一気に爆発暴走しているのが楽しい。

 これはパロディとはだいぶ違うし、パクリというものでもない。容易に「リスペクト」などという言葉を使いたくないのだが、この映画についてはその言葉を使うしかない気がする。引用方法がオリジナルのまんま!で、まったく何も変わっていないのだ。これぞ「ザ・引用」というものだろう。剽窃でも盗用でもなく、そっくりそのまま引き写していることにむしろ驚かされるぐらいだ。

 この映画がどういった客層にウケるのかはさっぱり予想ができないのだが、少なくとも監督と同じ「B級映画好き」には大ウケすること間違いなしだろう。ティム・バートンの『マーズ・アタック!』が好きな人なら、この映画はその変奏曲として十分に楽しめると思う。映画好きであればあるほど、特にB級映画が好きである人であればあるほど、この映画をより楽しめるのではないだろうか。もちろんこれを観て「あきれはてる」人は多いだろうが、これを観て「怒る人」がいればそれは無粋というものだ。まあ怒るなら怒ってもいい。しかしその時は、笑いながら怒る人になれ!

8月1日公開予定 シネ・リーブル池袋ほか全国ロードショー
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
2009年|1時間56分|日本|カラー
関連ホームページ:http://yamagatascream.gyao.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
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