ストレンジャーズ

ストレンジャーズ

2009/03/12 京橋テアトル試写室
深夜の自宅で謎の侵入者に理由もなく襲われる恐怖。
序盤はまずまずだが終盤はダレる。by K. Hattori

The Strangers [Original Motion Picture Soundtrack]  友人の結婚披露パーティから帰宅し、ふたりきりで一夜を過ごすカップルの家に、覆面をした3人組の男女が侵入。この予期せぬ訪問者たち(ストレンジャーズ)はカップルをもてあそぶように家の内外を追いかけ回し、ふたりを恐怖のどん底に突き落とす。アメリカで起きた「実話」をもとにした映画との触れ込みだが、この手の映画の常でその真偽のほどは定かではない。しかし本来なら絶対の安全を保障してくれるはずの家の中で、侵入した何者かによって住人が惨殺されるという筋立てにはリアリティがある。2000年暮れに起きた世田谷一家惨殺事件が、まさにこの映画に似たタイプの犯罪にも思えるからだ。「訪問者たち」は世界中にいる。映画の中で彼らが覆面をしているのは、彼らが特定の誰かではない、どこにでもいる何者かであることを暗示しているのかもしれない。

 映画の世界では、自宅に侵入した犯罪者を住人が撃退する物語が数多く作られてきた。例えば大ヒット作でシリーズ化もされた『ホーム・アローン』がそうだし、『ダイヤルMを廻せ!』(リメイク版は『ダイヤルM』)や『暗くなるまで待って』でもオードリー・ヘプバーンやグレース・ケリー、あるいはグウィネス・パルトロウ扮するヒロインは侵入者を撃退することに成功している。本作『ストレンジャーズ/戦慄の訪問者』は、そうした映画の約束事を逆手にとっているわけだ。映画の冒頭で物語の結末は暗示されている。しかしそれでも観客は、それまで観てきた映画の約束事に拘束されて、主人公たちがどこかで助かる余地が残されているのではないかと願う。それが裏切られるショックは大きい。

 もちろん「自宅で誰かに殺される」というアイデアは、これが最初ではない。大ヒット映画『スクリーム』の冒頭でも、ドリュー・バリモアが殺人鬼(こちらもマスク装着)に殺されていた。しかしこれは導入部に配置された小さなエピソードであり、ネーブ・キャンベル扮する主人公はやはり最後まで生き残ることが出来る点で、映画の約束事をきちんと守っていると言えるのだ。

 そいういうわけでホラー映画としてはちょっとユニークな構成の本作だが、面白いのは映画の序盤から中盤までで、それ以降は急速にダレてくるのがちょっと残念。まず舞台になっているのが「住み慣れた我が家」ではなく、友人の結婚式のためたまたま泊まることになった別荘という設定がやや中途半端かもしれない。この映画では謎の侵入者だけでなく、主人公たちもまた、偶然そこを訪ねていたストレンジャーズなのだ。これは犯人と主人公を対比させるためにも、主人公たちの居場所を「自宅」にした方がよかっただろう。犯人たちの目的が見えないところがこの映画の恐さだが、終盤になるとそれが消去法的に見えてきてしまうのも残念。最後のオチは面白かったが、ダメ押しの見え透いたサプライズは不要だと思う。

(原題:The Strangers)

4月4日公開予定 新宿ミラノ、シアターN渋谷
配給:プレシディオ
2008年|1時間25分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|DOLBY DIGITAL
関連ホームページ:http://www.strangers.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:ストレンジャーズ/戦慄の訪問者
サントラCD:The Strangers
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