チャーリー・バートレットの男子トイレ相談室

2009/02/26 アスミック・エース試写室
札付きの問題児チャーリー・バートレットが学校を救う。
コミカルではあるが中身は真面目。by K. Hattori

Charlie Bartlett  資産家のお坊ちゃまで、学業成績もすこぶる優秀なチャーリー・バートレットは17歳の高校生。しかし彼には「何をしてでも目立ちたい」という困った性分があった。そのおかげで次々に問題行動を起こし、入学した名門私立学校は片っ端から退学処分。いよいよ受け入れてくれる学校がなくなったチャーリーは、自宅近くの公立学校に通うことになる。だが良家の子女が集まる私立校と違って、公立高校はまるで動物園だった。しかし精神科医から処方されたリタリンでハイになれることを知ったチャーリーは、薬を他の生徒たちに売りさばいて一躍学校内の人気者。精神科医から次々に処方薬をゲットするチャーリーが薬を配布する男子トイレの前には、男女を問わず生徒たち長蛇の列が出来るようになるのだった。

 映画は全体にコミカルなタッチで、随所に仕掛けられたクスグリやギャグに頬がゆるみっぱなし。時には爆笑を誘われるシーンもある。粗暴な生徒との駆け引き、いじめられっ子への励まし、ガールフレンドとの初体験、校長への反抗、親との葛藤など、学園ドラマにありがちなモチーフも一通り揃っている。しかし優れたコメディ映画のほとんどがそうであるように、この映画も「笑い」の下にたっぷりと真剣で真面目なメッセージが仕込まれている。この映画に登場する人たちは、誰もが心の中に大きな傷を抱えて苦しんでいる。その苦しみや痛みがリアルに描かれているからこそ、チャーリーの巻き起こす騒動の荒唐無稽さが痛快に感じられるのかもしれない。

 大人になって振り返れば「つまらない悩みだった」と思えることでも、十代の少年少女たちにとっては人生を左右する大きな悩み事であったりすることは多い。そんな「思春期の(つまらない)悩み」をクロースアップしてみせるのが青春映画のひとつの手法ではあるのだが、本作は子供たちの悩みや葛藤に焦点を当てながら、同時に大人たちの悩みや葛藤にもフォーカスしていく。大人から見て子供たちが「つまらない悩み」を抱えているのだとすれば、同じように子供から見た大人たちもまた「つまらない悩み」を抱えて苦しんでいるのだ。この映画の中では主人公チャーリーの母や、ガールフレンドであるスーザンの父・ガーデナー校長が、そうした「つまらない悩み」を抱えている大人たちだろう。

 世界の神話や民話の中には、「トリックスター」と呼ばれるいたずら者がしばしば登場する。悪意の有無にかかわらず既存の秩序を引っかき回し、社会に混乱をもたらす迷惑な厄介者。しかし混乱の後に訪れた新しい秩序が、人々を幸福にすることもしばしばだ。本作の主人公チャーリーも、こうしたトリックスターの血を色濃く受け継ぐ愛すべき厄介者だ。彼は既存の秩序をぶち壊すことで、結果としてはそこにいる傷ついた人々を癒すことになる。映画を観て「チャーリーに転校してきてほしい!」と思う高校生は多いと思う。

(原題:Charlie Bartlett)

4月4日公開予定 ヒューマントラストシネマ文化村通り、銀座シネパトス
配給:ゴールドラッシュ・ピクチャーズ、ワイズポリシー
2007年|1時間37分|アメリカ|カラー|1:1.85ビスタ|DTS、ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:チャーリー・バートレットの男子トイレ相談室
DVD (Amazon.com):Charlie Bartlett
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