スバル

2009/02/18 ワーナー・ブラザース試写室
曽田正人の同名人気コミックを実写映画化。
天才バレエ少女と彼女に翻弄される人々。by K. Hattori

Bolero / Kiss The Baby Sky / 忘れないで  幼い頃に母と双子の弟・和馬を病気で失った宮本すばるにとって、自分を解き放てるのはバレエを踊るときだけだった。だが元バレエダンサー日比野五十鈴が経営する猥雑な小劇場パレ・ガルニエで舞台に立ちながら、すばるは自分の中に眠る底知れぬ才能に気づかずにいる。そんな彼女に目を付けたのは、名門アメリカン・バレエ・シアターの若き俊英リズ・パークだ。彼女はすばるを一目見たときから、自分にとっての終生のライバルになると見抜く。やがて名門バレエ団の「白鳥の湖」公演で群舞ダンサーを公募した際、すばるは幼なじみの真奈に誘われてオーディションに参加するのだが……。

 曽田正人の同名コミックは、現在も続編「MOON ‐昴 ソリチュード スタンディング‐」がビッグコミック・スピリッツ誌で連載されている人気作品。「シャカリキ!」や「め組の大吾」「capeta」など作品が次々映像化されている著者にとっても、この作品のヒロイン・宮本すばるは、特に思い入れの深いキャラクターのようだ。その作品を映像化するにあたり、メガホンをとったのは『不夜城』で日本との合作を経験済みのリー・チーガイ監督。彼はそれ以前にも日本のコミック原作で『裏町の聖者』(原作は「Dr.クマひげ」)という映画を撮ったこともある。製作総指揮は『グリーン・デスティニー』や『ラスト、コーション』のビル・コン。

 正当な訓練を積んでいない天才少女が現役を引退している往年のスターに導かれて才能を開花させ、エリート育ちのライバルと火花を散らすという原作の展開は「ガラスの仮面」と同じ。映画は日比野五十鈴の過去をオブラートに包んで「ガラスの仮面」的な因縁話の要素を薄めつつ、日本人の少女が自分と同年配の韓国系少女と国際コンクールで競い合うという展開で、現在の女子フィギュア・スケート界を連想させる展開に置き換えている。宮本すばるは浅田真央であり、リズ・パークはキム・ヨナなのだ。

 若い天才ダンサー同士の対決というドラマと併走するのは、天才の周囲で翻弄される人々の姿。紛れもない天才を目の前にして、天才でない人は否応なしに自分の才能のなさを思い知らされ打ちのめされる。それは例えば、すばるをバレエの世界に導く日比野五十鈴の中にもある葛藤かもしれない。「私にはもうあの子に何も教えられない」とすばるを手放す五十鈴は、自分の教え子が大きく成長した喜びと共に、彼女自身が誇りとしていた自分の才能や技術をすばるが凌駕してしまったことに対する複雑な思いもあるはずなのだ。

 「天才と出会ってしまった苦悩」を象徴するのは、すばるの幼なじみである呉羽真奈だ。ステージで喝采を浴びるすばるを舞台袖からながめながら、「私はすばるちゃんが本当に大好きなのよ。でもそれと同じくらい、憎らしいと思うことがあるの」と唇を噛みしめる彼女の存在が、この映画をヒロインの成長物語以上のものにしている。

3月20日公開予定 渋谷東急ほか全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザー映画 宣伝:樂舎
2009年|1時間45分|日本|カラー|ビスタサイズ|ドルビーSRD
関連ホームページ:http://www.subaru-movie.com/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:昴 ‐スバル‐
主題歌CD:faraway(倖田來未)
メインテーマCD:bolero(東方神起)
テーマ曲CD:Colps de ballet(冨田ラボ)
サントラCD:トリビュート・トゥ・昴-スバル-ストリート・ダンス編
サントラCD:トリビュート・トゥ・昴-スバル-バレエ・ダンス編
原作コミック:昴 -スバル-(曽田正人)
関連DVD:リー・チーガイ監督
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