デイ・オブ・ザ・デッド

2008/06/27 映画美学校第2試写室
ジョージ・A・ロメロの『死霊のえじき』をリメイク。
配役が原因で映画が軽薄になった。by K. Hattori

Day of the Dead  1985年に製作されたジョージ・A・ロメロのゾンビ映画第3弾『死霊のえじき』のリメイク。『ファイナル・デスティネーション』のジェフリー・レディックが脚本を書き、『13日の金曜日』シリーズや『ハロウィンH20』『U.M.A.レイク・プラシッド』のスティーヴ・マイナーが監督している。主演は『アメリカン・ビューティー』のミーナ・スヴァーリ、『ドラムライン』のニック・キャノンなど。アメリカでは劇場公開されずDVD発売のみだったが、日本では小規模ながら劇場公開されるのでゾンビ好きは必見だ。映画としては少々パワー不足ではあるが、スピーディに動き回るゾンビたちとの乱闘など、手に汗握るアクションシーンも多い。

 物語はロメロのゾンビものというより、そこから派生した『バイオハザード』の影響が強い。ゾンビ出現の原因が軍の秘密実験によるものだという理由付けや、軍の施設が町の地下にあるという設定、ヒロインが軍人とチームを組んでゾンビと戦う状況などは、そのまま『バイオハザード』なのだ。『バイオハザード』は戦うヒロインが地下から地上に出るまでの物語だったが、『デイ・オブ・ザ・デッド』はその逆バージョン。地上にあふれ出たゾンビのルーツをたどって、ヒロインが地下世界に入り込む話になっている。『バイオハザード』の世界を地上から見ると、たぶん今回の映画になる。

 ロメロのゾンビ映画には現代社会に対する批判や風刺の毒があるのだが、このリメイク版は最初から最後までアクション・エンターテインメントに徹している。それを実現しているのが、ゾンビについてのいくつかの設定変更だ。この映画のゾンビは噛みつかれて増えていくだけでなく、なんと空気感染するのだ。このため舞台となる小さな町はあっという間にゾンビだらけになる。ゾンビ同士は共食いをしないので、この映画では血みどろの人肉食描写は二の次で、ゾンビが生きている人間を追いかけ回し、人間がそこから逃げ回るというアクションがクローズアップされることになる。

 親しい者がゾンビになったり、感染を巡って仲間内で疑心暗鬼が広がるといったドラマも用意はされているが、それよりこの映画で強調されているのは、いかにしてゾンビから逃れて生き延びるかというサバイバル・アクション。これはビデオゲームの感覚だ。最後は敵の本拠地に乗り込んで、強力なラスボスを倒せばそのステージはクリアされる。

 この映画にハードなアクション映画としてのパワーが不足しているのは、ヒロインのミーナ・スヴァーリが「ホットでタフな女兵士」に見えないという決定的な弱点があるからだ。彼女は屈強な兵士たちを従えるリーダーとしては、どうにも貫禄不足。彼女の演技が女優としていいか悪いかは別として、今回の役には説得力が欠けている。『バイオハザード』のミラ・ジョヴォヴィッチとスヴァーリじゃ、キャラがまるで違うだろうに。

(原題:Day of the Dead)

8月下旬公開予定 シアターN渋谷、銀座シネパトス
配給:ムービーアイ 宣伝:フリーマン・オフィス
2008年|1時間25分|アメリカ|カラー|ヴィスタサイズ|SRD
関連ホームページ:http://www.dayofthedead.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:デイ・オブ・ザ・デッド
DVD (Amazon.com):Day of the Dead
関連DVD:死霊のえじき(1985)
関連DVD:スティーヴ・マイナー監督
関連DVD:ミーナ・スヴァーリ
関連DVD:ニック・キャノン
関連DVD:ヴィング・レイムス
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