東京少年

2008/01/09 松竹試写室
10年前の事故で両親を失った少女の文通相手とは……。
堀北真希主演のラブストーリー。by K. Hattori

 「ケータイ刑事 銭形シリーズ」や「恋する日曜日」に続く、BS-i放送のドラマシリーズ「東京少女」の映画版。(ドラマ版と同じ『東京少女』というタイトルの映画も、本作『東京少年』と同時に作られている。)ドラマ版は若手女優が次々に主演する単発シリーズであり、この映画もドラマ版とは切り離されたエピソードの独立した作品となっている。主演は『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズで、鈴木オートの女性整備士・六ちゃんを演じている堀北真希。彼女はドラマ版「東京少女」にも出演しているが、本作との内容的な繋がりはない。

 コンビニでアルバイトをしている藤木みなとは、幼い頃に両親を亡くし、今は祖母と二人暮らしをしている少女。親しい友だちはいないが、10年前から文通しているナイトという同い年の少年だけには何でも心を打ち明けることができる。最近みなとがナイト宛に書いた手紙には、コンビニで出会った唐沢シュウという少年の話が頻繁に登場する。みなとはシュウに恋をしたのだ。やがてみなととシュウは交際を始めるのだが、みなとはデートの最中に気を失ってしまう。気がつくと、何事もなかったように自宅のベッドの上。不思議なことに、ケータイからはシュウの電話番号や連絡先が削除されている。いったい自分の身に何があったのか? それから間もなくして、シュウはみなとに突然別れ話を切り出すのだった……。

 映画のチラシなどにも最初から「二重人格の少女」と書かれているので、この映画ではヒロインの恋を彼女のもうひとつの人格が邪魔するということ自体は秘密でも何でもないのだろう。映画の見どころは「彼女に何が起きているのか?」というミステリーやサスペンスにあるのではなく、ヒロインが抱えているふたつの人格の葛藤そのものにある。これはヒロインを演じた堀北真希の演技に、この映画全体がゆだねられていることを意味する。彼女の演技に説得力がなければ、この映画全体が嘘っぱちになってしまうのだ。

 映画を観ている人は、ヒロインの中にあるもうひとつの人格、もうひとりの主人公の存在に納得できだろうか。この映画の製作者たちは女優としての堀北真希に賭け、彼女もその期待に応えて女優としての真価をかいま見せた。彼女は「みなと」と「ナイト」というふたりの人物を、きちんと演じ分けてみせたと思う。これは演技の技巧とか何とか言う以前に、本人の気持ちの問題だろう。みなとやナイトになりきろうとする気持ちが、役の中に結実したのだ。

 映画の技巧としては、みなととシュウの視点から同じシーンを2度繰り返すという構成が面白い。ふたつの視点を、カメラポジションも変えて表現している。しかしラブストーリーとしては、ナイトの気持ちの大きさに比べて、シュウのキャラクターが弱いように感じた。血を吐くようなナイトの必死さに比べると、シュウの行動や言葉はきれい事に思える。

2月2日公開予定 新宿トーア
配給:エム・エフボックス 宣伝:る・ひまわり 宣伝協力:クルーズ
2008年|1時間35分|日本|カラー|ビスタサイズ|ステレオSR
関連ホームページ:http://w3.bs-i.co.jp/cinemadrive/boy/index.html
DVD:東京少年
ノベライズ:東京少年 (Linda BOOKS!)
主題歌収録CD:Love song(浜田真理子)
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