ファイアー・ドッグ

消防犬デューイの大冒険

2007/08/21 20世紀フォックス映画試写室
ハリウッドのセレブ犬がひょんなことから消防犬として大活躍。
動物映画としてはそこそこのでき。by K. Hattori

 主演映画が次々に大ヒットを飛ばすハリウッドの超有名な俳優犬レックスは、新作映画撮影中の事故で飛行機から転落。関係者はてっきりレックスが死んだものと考えるが、どっこいレックスは生きていた。ビル火災に巻き込まれて間一髪の所を消防署の隊長に助けられたことから、レックスは消防署のマスコット犬に。首輪に付いていたデューイという名前が、彼の新しい名前になった。ところがこの消防署、内部にいろいろと問題を抱えている。少し前から近隣のビルや工場で不審火が相次いでおり、その消火活動中に前隊長が殉職していたのだ……。

 頭が良くてチャーミングなワンちゃんが、新しい飼い主となった少年の心の傷を癒し、連続放火魔逮捕にも協力するという物語。大人側の物語や政治的陰謀のドラマなども盛り込まれているが、中心になるのは少年と犬の交流。過激な暴力もなければセックスもない、小さな子供から大人までみんなが楽しめる健全なファミリー映画だ。

 物語自体は他愛のないおとぎ話で、主役の犬レックス(デューイ)のセレブリティぶりは、実際のハリウッドセレブの軽薄で皮相なパロディになっている。犬の活躍ぶりをCGを使って描いている部分もあり、物理法則を無視したジャンプなどは観ていてちょっと冷めてしまった。子供は楽しいかもしれないけど、大人はどうかなぁ……、という心配が増してくるのだ。でもこうした露骨すぎるCG使用は映画の前半部分に集中していて、中盤以降はあまり目立たない。たぶんこうした序盤のCG効果は、観客に主役犬のスーパードッグぶりを印象づけるためのものなのだろう。「この犬は特別!」と観客が信じられれば、あとは特に非現実的な活躍を見せなくてもOKなのだ。

 パッケージとしては完全にお子様向けの映画だが、その中に演技派のブルース・グリーンウッドや、味のあるキャラクターが売りのビル・ナンのような中堅俳優を配置することで、映画の格をずいぶん上げている。素材もストーリーもお子様映画だが、要所に大人もうならせる本物指向の芝居があって、物語全体が「マンガ」になってしまうことを防いでいる。

 子供向き映画ではあるが、物語の骨組みがしっかりしているので、大人が観てもつまらないということはないはず。個々のエピソードは使い古された感じがして新鮮味には欠けるが、観客のすべてが映画に新しさや新鮮さだけを求めているわけではない。定石通りの展開で、定石通りのツボを押さえた映画が楽しめればそれでいいという考え方だってある。確かに観ていて、もう少しエピソードを補ってほしいと思える場面は多い。でもこの映画は、現時点で既に1時間51分もあるのだ。エピソードを補って2時間超の大作にしたところで、「ワンちゃん大活躍の子供向け映画」という基本コンセプトに変わりはない。これはワンちゃんをたっぷり見せて、ドラマは少し刈り込んでおくのが正解なのだ。

(原題:Firehouse Dog)

9月1日公開予定 T・ジョイ大泉ほか全国ロードショー
配給:20世紀フォックス 宣伝:スキップ
2007年|1時間51分|アメリカ|カラー|ビスタサイズ|SR-D
関連ホームページ:http://microsites2.foxinternational.com/jp/firehousedog/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:ファイアー・ドッグ/消防犬デューイの大冒険
DVD (Amazon.com):Firehouse Dog (Full Screen Edition)
サントラCD:Firehouse Dog
関連DVD:トッド・ホランド監督
関連DVD:ジョシュ・ハッチャーソン
関連DVD:ブルース・グリーンウッド
関連DVD:ビル・ナン
ホームページ
ホームページへ