ワン・デイ・イン・ヨーロッパ

2007/08/03 シネカノン試写室
ロシア、トルコ、スペイン、ドイツが舞台のオムニバス映画。
各都市の共通モチーフはサッカーと泥棒。by K. Hattori

 UEFAチャンピオンズリーグの決勝戦が開催される1日を背景に、ヨーロッパ4カ国の4都市で起きる事件を描いたオムニバス映画。各エピソードに人物や事件のつながりはまったくない。共通するのは、これが同じ1日を描いているという点と、主人公がその土地を訪れた外国人旅行者だという点、そして泥棒や強盗がモチーフになっている点だ。4カ国で撮影され、飛び交う言葉は7つ。サッカーとユーロで結ばれた現在のヨーロッパをシャープに切り取って見せたのは、これが長編2作目のドイツ人監督ハネス・シュテーア。

 第1話はロシア・モスクワ編。タクシーから降りた途端に強盗に遭ったイギリス人女性ケイトが、たまたま近くで事件の一部始終を見ていたロシア人のおばあさんと一緒に警察に行く。英語が通じない中で、イギリス人のケイトとロシア人のおばあさんは身振り手振りのコミュニケーション。この第1話は最後のオチまでなかなか面白いのだが、その先に何が起きるのかがとても気になる。まあ多分、何も起きないのだろう。それも含めて、ちょっと人を食ったような味わいがある。

 第2話はトルコのイスタンブールが舞台。ドイツ人青年のロッコは、狂言強盗で保険金を手に入れようとするのだが、偶然出会ったタクシーの運転手は警察に行く前に犯人を捕まえようとする熱血漢。しかしこの強盗はそもそもが狂言なのだから、犯人など見つかるはずがない。ようやくトルコの警察に駆け込んだ青年が、被害者であるにもかかわらず(狂言だけど)まるで犯罪の容疑者か何かのような扱いを受ける場面は、ちょっとしたサスペンス。何しろトルコは、『ミッドナイト・エキスプレス』の国だからね。

 第3話は、ハンガリーからスペインのサンティアゴ・デ・コンポステラにやってきた巡礼者が、思い出のいっぱい詰まったカメラを盗まれてしまう話。近くにいた警官に助けを求めたら、これがじつに明るく調子よく犯人捜しを請け合ってくれる。この明るい警官が、最後に残酷な表情を見せるのがショッキング。親しみやすい街の「お巡りさん」は、身内の不祥事を隠蔽する「警察官僚」に早変わりしてしまう。こういう話は、どこの国にでもありそうだ。

 第4話はドイツで大道芸しているフランス人カップルの話。実入りが悪くて文無しになった彼らは、狂言強盗で保険金を騙し取ろうと考える。ところが古いガイドブックに載っている治安情報は、ドイツ社会のここ数年来の変化にまるで対応していない。数年前までスラム化していた地区が、今では高級住宅街になっていたりする。東西ドイツ合併後のドイツ社会の大きな変化と他民族化の現状を、コミカルに描いたドタバタ劇。面白いけど「狂言強盗」というアイデアが、第2話と共通している分だけ新鮮味に欠ける。トルコではドイツ人が狂言強盗を演じ、ドイツではフランス人が狂言強盗を試みるという意味では、バランスを取っているのかも。

(原題:One Day in Europe)

9月1日公開予定 池袋シネマ・ロサ
配給:ユナイテッド エンタテインメント
2005年|1時間35分|ドイツ、スペイン|カラー|ビスタ|ドルビーSRD
関連ホームページ:http://www.odie.jp/
The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:ワン・デイ・イン・ヨーロッパ
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