リーピング

2007/05/22 TOHOシネマズ錦糸町(スクリーン3)
オスカー女優ヒラリー・スワンク主演のオカルト・スリラー。
南部の小さな町で起きた超常現象の謎。by K. Hattori

 海外での宣教活動中に目の前で夫と娘を亡くし、信仰を失ってしまったキャサリン。彼女は敬虔なクリスチャンから無神論に転向し、世界中で起きているさまざまな「奇跡」を調査し、そこに何の超自然も存在しないことを暴くことに情熱を傾けていた。そんな彼女のもとに、アメリカ南部の小さな町で起きた事件の調査が依頼される。そこではひとりの少年の死をきっかけに、川の水が赤く変色したのだという。保守的なクリスチャンの多い町では、その異変を旧約聖書に出てくる「10の災い」の再来だと考えていた。やがて次々に町に起きる災いの数々。その出来事の中心には、常にひとりの少女がいた……。

 ジョエル・シルヴァーとロバート・ゼメキスのダークキャッスル・エンターテインメントが、『蝋人形の館』に続いて製作したオカルオカルト・ホラー・サスペンス。脚本も『蝋人形の館』と同じケイリー・W・ヘイズとチャド・ヘイズのコンビ。旧約聖書の出エジプト記に登場する10の災いが聖書の記述通りに次々起こり、超常現象などまったく信じようとしないヒロインすらも、そこに超自然の力を感じざるを得なくなるというお話だ。聖書に描かれた10の災いは、出エジプト記を映画化した『十戒』などにも登場するし、エジプトのミイラがよみがえるアクション・アドベンチャー映画『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』でも大きな見せ場になっていた。しかし映像のリアリティという点で、今回の『リーピング』は「映像化された10の災い」の最高峰だ。

 川沿いの大湿地帯が、一面真っ赤に染まる序盤の映像にまず驚かされる。一体全体、これはどうやって撮影したんだろう。もちろんデジタル技術の発達によって、今は実現不可能な映像なんて存在しない時代だ。でもこの映画では、デジタル技術とライブアクションを巧みに組み合わせて、じつにリアルな日常の延長にある異世界を作り上げている。この映画では他にも、アブやシラミ、そしてイナゴの大発生という見せ場があるのだが、日常の延長にある異世界という意味では、川の水が血に変わる導入部のエピソードと、家畜が次々怪死する中盤のエピソードがもっとも恐ろしい。放牧されていた牛が次々にへたり込んで死に、山積みにされた牛の死骸を牧場の隅にブルドーザーで掘った穴の中で野焼きにする場面にはぞっとする。この風景、じつは超常現象でも何でもなく、狂牛病騒ぎの中で海外ニュースの一コマとして見ていたような風景にそっくりではないか。映画の中の荒唐無稽なフィクションが、この場面で我々の住む日常に繋がってしまうのだ。これは恐い!

 こうした個々のビジュアルに面白さはあるのだが、映画のストーリーとしては、聖書ネタに徹しきれずにそこをはみ出してしまったのが残念。途中から『オーメン』になって、クライマックスは『炎の少女チャーリー』で、最後は『ローズ・マリーの赤ちゃん』か……。新鮮味なしだ。

(原題:The Reaping)

5月20日公開 サロンパス丸の内ルーブルほか全国松竹東急系
配給:ワーナー・ブラザース映画
2007年|1時間40分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|SDDS、Dolby Digital、DTS
関連ホームページ:http://wwws.warnerbros.co.jp/thereaping/
DVD:リーピング
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